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交流回路のテブナンの定理
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テブナンの定理(鳳-テブナンの定理)は等価電圧源の定理とも呼ばれ、電源を含む回路において、ある特定の素子に流れる電流を求めたいときに有用な定理です。
例えば、次のような電源を含む回路があって、この回路の端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間に接続されているインピーダンス $\dot{Z}$[$\Omega$]に流れる電流 $\dot{I}$[$\mathrm{A}$]を求めたいとします。
このとき、インピーダンス $\dot{Z}$ を取り外した状態での端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間に現れる電圧(開放電圧)を $\dot{V_0}$[$\mathrm{V}$]、
インピーダンス $\dot{Z}$ を取り外した状態での端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の合成インピーダンスを $\dot{Z_0}$[$\Omega$]とすると、
端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の合成インピーダンス $\dot{Z_0}$ を求めるときは、電圧源は短絡、電流源は開放します。
端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ より左側の回路は、起電力が $\dot{V_0}$ で内部インピーダンスが $\dot{Z_0}$ の電圧源に置き換える(等価変換する)ことができ、
この置き換えた電圧源を、テブナンの等価電圧源とか、テブナンの等価回路といいます。
インピーダンス $\dot{Z}$ に流れる電流 $\dot{I}$ は、次の式で求めることができます。
$\dot{I} =\dfrac{\dot{V_0}}{\dot{Z_0} +\dot{Z}}$ …① (テブナンの定理の式)
これがテブナンの定理で、テブナンの定理を使うと、電流を求めたいところの特定の素子を除いた部分の回路(この場合、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ より左側の回路)を内部インピーダンスがある1つの電圧源で等価的に置き換えることができるので、複雑な回路であっても回路を単純化して電流の計算をできるようになります。
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テブナンの定理による電流の求め方を整理すると、次のような手順(STEP1〜STEP5)になります。
STEP3とSTEP4の順番は逆でもかまいません。
以上のような手順で、インピーダンス $\dot{Z}$ に流れる電流 $\dot{I}$ を求めることができます。
では続いて、テブナンの定理の問題でよくある回路を例にして、インピーダンスに流れる電流を求めてみましょう。
このページではテブナンの定理を交流回路で解説していますが、テブナンの定理は直流回路でも成り立つ定理です。直流回路のテブナンの定理については、こちらのテブナンの定理のページを参考にしてみてください。
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交流回路のテブナンの定理による電流の計算
ここでは、
- 電源が1つ、インピーダンスが4つある回路
- 電源が2つ、インピーダンスが3つある回路
の2つの回路について、テブナンの定理を用いてインピーダンスに流れる電流を求めてみます。
電源が1つ、インピーダンスが4つある回路
テブナンの定理を用いて、次の回路のインピーダンス $\dot{Z_4}$ に流れる電流 $\dot{I}$ を先ほどのSTEP1〜5の手順に従って求めてみます。
インピーダンス $\dot{Z_4}$ に流れる電流を求めたいので、インピーダンス $\dot{Z_4}$ の両端を端子「$\mathrm{a}$」「$\mathrm{b}$」とします。
インピーダンス $\dot{Z_4}$ を取り外して、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間を開放状態にします。
インピーダンス $\dot{Z_4}$ を取り外したときの回路は、STEP2より次のような回路になるので、
この回路に流れる電流 $\dot{I_0}$[$\mathrm{A}$]は、
$\dot{I_0} =\dfrac{\dot{V}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
となります。なので、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の電圧(開放電圧)$\dot{V_0}$ は、
$\dot{V_0} =\dot{Z_2}\dot{I_0} =\dot{Z_2}\times\dfrac{\dot{V}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
$\therefore\dot{V_0} =\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$ (開放電圧 $\dot{V_0}$ )
となります。
ちなみに、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の電圧(開放電圧)$\dot{V_0}$ は、分圧の公式を使って、
$\dot{V_0} =\dot{V}\times\dfrac{\dot{Z_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
$\therefore\dot{V_0} =\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$ (開放電圧 $\dot{V_0}$ )
と求めることもできます。
電圧源は短絡し、電流源は開放して回路内のすべての電源を取り除くと、回路は次のようになります。
この回路の電源は電圧源だけなので、電圧源を短絡します。
電源を取り除くと、「インピーダンス $\dot{Z_1}$ とインピーダンス $\dot{Z_2}$ の並列接続」が「インピーダンス $\dot{Z_3}$ 」と直列に接続された回路になっているので、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ からみた回路の合成インピーダンス $\dot{Z_0}$ は、
$\dot{Z_0} =\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}} +\dot{Z_3}$
$=\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_3}\left(\dot{Z_1} +\dot{Z_2}\right)}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
$=\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_3}\dot{Z_1} +\dot{Z_3}\dot{Z_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
$\therefore\dot{Z_0} =\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_2}\dot{Z_3} +\dot{Z_3}\dot{Z_1}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$ (合成インピーダンス $\dot{Z_0}$ )
となります。
STEP3で求めた開放電圧 $\dot{V_0}$ とSTEP4で求めた合成インピーダンス $\dot{Z_0}$ は、
$\dot{V_0} =\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
$\dot{Z_0} =\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_2}\dot{Z_3} +\dot{Z_3}\dot{Z_1}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
で、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間のインピーダンスは $\dot{Z_4}$ なので、これらをテブナンの定理の式(①式)に代入すると、
$\dot{I} =\dfrac{\dot{V_0}}{\dot{Z_0} +\dot{Z_4}}$
$=\dfrac{\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}}{\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_2}\dot{Z_3} +\dot{Z_3}\dot{Z_1}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}} +\dot{Z_4}}$
$=\dfrac{\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}}{\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_2}\dot{Z_3} +\dot{Z_3}\dot{Z_1} +\dot{Z_4}\left(\dot{Z_1} +\dot{Z_2}\right)}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}}$
$=\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_2}\dot{Z_3} +\dot{Z_3}\dot{Z_1} +\dot{Z_4}\left(\dot{Z_1} +\dot{Z_2}\right)}$
$\therefore\dot{I} =\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_2}\dot{Z_3} +\dot{Z_3}\dot{Z_1} +\dot{Z_4}\left(\dot{Z_1} +\dot{Z_2}\right)}$ …② (インピーダンス $\dot{Z_4}$ に流れる電流 $\dot{I}$ )
となり、この電流 $\dot{I}$ がインピーダンス $\dot{Z_4}$ に流れる電流になります。
以上で、「電源が1つ、インピーダンスが4つある回路」のインピーダンス $\dot{Z_4}$ に流れる電流 $\dot{I}$ が求められました。
ちなみに、この回路のインピーダンス $\dot{Z_3}$ と $\dot{Z_4}$ は直列に接続されていて、インピーダンス $\dot{Z_3}$ と $\dot{Z_4}$ には同じ電流が流れるので、
初めに決める端子「$\mathrm{a}$」「$\mathrm{b}$」の位置(STEP1で決める端子「$\mathrm{a}$」「$\mathrm{b}$」の位置)を次のようにして電流 $\dot{I}$ を求めることもできます。
この回路の端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間に現れる電圧(開放電圧)$\dot{V_0}$ は、
$\dot{V_0} =\dot{V}\times\dfrac{\dot{Z_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
$\therefore\dot{V_0} =\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$ (開放電圧 $\dot{V_0}$ )
端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ からみた回路の合成インピーダンス $\dot{Z_0}$ は、
$\therefore\dot{Z_0} =\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$ (合成インピーダンス $\dot{Z_0}$ )
で、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間のインピーダンスは $\dot{Z_3} +\dot{Z_4}$ なので、これらをテブナンの定理の式(①式)に代入して電流 $\dot{I}$ を求めると、
$\dot{I} =\dfrac{\dot{V_0}}{\dot{Z_0} +\left(\dot{Z_3} +\dot{Z_4}\right)}$
$=\dfrac{\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}}{\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}} +\left(\dot{Z_3} +\dot{Z_4}\right)}$
$=\dfrac{\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}}{\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\left(\dot{Z_3} +\dot{Z_4}\right)\left(\dot{Z_1} +\dot{Z_2}\right)}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}}$
$=\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_3}\dot{Z_1} +\dot{Z_3}\dot{Z_2} +\dot{Z_4}\dot{Z_1} +\dot{Z_4}\dot{Z_2}}$
$=\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_2}\dot{Z_3} +\dot{Z_3}\dot{Z_1} +\dot{Z_4}\left(\dot{Z_1} +\dot{Z_2}\right)}$
$\therefore\dot{I}=\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V}}{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_2}\dot{Z_3} +\dot{Z_3}\dot{Z_1} +\dot{Z_4}\left(\dot{Z_1} +\dot{Z_2}\right)}$ …③ (インピーダンス $\dot{Z_3}$ と $\dot{Z_4}$ に流れる電流 $\dot{I}$ )
となり、この電流 $\dot{I}$ がインピーダンス $\dot{Z_4}$ に流れる電流( $\dot{Z_3}$ と $\dot{Z_4}$ に流れる電流)になります。(ここで求めた③の電流 $\dot{I}$ は、さきほど求めた②の電流 $\dot{I}$ と一致します。)
次は、電源が2つある回路の計算をしてみましょう。
電源が2つ、インピーダンスが3つある回路
テブナンの定理を用いて、次の回路のインピーダンス $\dot{Z_3}$ に流れる電流 $\dot{I}$ を求めてみます。
インピーダンス $\dot{Z_3}$ に流れる電流を求めたいので、インピーダンス $\dot{Z_3}$ の両端を端子「$\mathrm{a}$」「$\mathrm{b}$」とします。
インピーダンス $\dot{Z_3}$ を取り外して、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間を開放状態にします。
インピーダンス $\dot{Z_3}$ を取り外したときの回路はSTEP2より次のようになり、この回路において、次のように右回り(時計回り)の電流 $\dot{I_0}$ が流れるものと仮定すると、
キルヒホッフの法則より、電流 $\dot{I_0}$ は次のようになります。
$\dot{V_1} -\dot{V_2} =\dot{Z_1}\dot{I_0} +\dot{Z_2}\dot{I_0}$
$\dot{V_1} -\dot{V_2} =\left(\dot{Z_1} +\dot{Z_2}\right)\dot{I_0}$
$\therefore\dot{I_0} =\dfrac{\dot{V_1} -\dot{V_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
したがって、インピーダンス $\dot{Z_1}$ での電圧降下は $\dot{Z_1}\dot{I_0} =\dfrac{\dot{Z_1}\left(\dot{V_1} -\dot{V_2}\right)}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$[$\mathrm{V}$]となるので、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の電圧(開放電圧)$\dot{V_0}$ は、
$\dot{V_0} =\dot{V_1} -\dot{Z_1}\dot{I_0}$
$=\dot{V_1} -\dfrac{\dot{Z_1}\left(\dot{V_1} -\dot{V_2}\right)}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
$=\dfrac{\dot{V_1}\left(\dot{Z_1} +\dot{Z_2}\right) -\dot{Z_1}\left(\dot{V_1} -\dot{V_2}\right)}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
$=\dfrac{\dot{Z_1}\dot{V_1} +\dot{Z_2}\dot{V_1} -\dot{Z_1}\dot{V_1} +\dot{Z_1}\dot{V_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
$=\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V_1} +\dot{Z_1}\dot{V_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
$\therefore\dot{V_0} =\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V_1} +\dot{Z_1}\dot{V_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$ (開放電圧 $\dot{V_0}$ )
となります。
電圧源は短絡し、電流源は開放して回路内のすべての電源を取り除くと、回路は次のようになります。
この回路の電源は電圧源だけなので、電圧源を短絡します。
電源を取り除くとインピーダンス $\dot{Z_1}$ とインピーダンス $\dot{Z_2}$ が並列に接続された回路になっているので、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ からみた回路の合成インピーダンス $\dot{Z_0}$ は和分の積で、
$\therefore\dot{Z_0} =\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$ (合成インピーダンス $\dot{Z_0}$ )
となります。
STEP3で求めた開放電圧 $\dot{V_0}$ とSTEP4で求めた合成インピーダンス $\dot{Z_0}$ は、
$\dot{V_0} =\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V_1} +\dot{Z_1}\dot{V_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
$\dot{Z_0} =\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}$
で、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間のインピーダンスは $\dot{Z_3}$ なので、これらをテブナンの定理の式(①式)に代入すると、
$\dot{I} =\dfrac{\dot{V_0}}{\dot{Z_0} +\dot{Z_3}} =\dfrac{\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V_1} +\dot{Z_1}\dot{V_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}}{\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}} +\dot{Z_3}}$
$=\dfrac{\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V_1} +\dot{Z_1}\dot{V_2}}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}}{\dfrac{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_3}\left(\dot{Z_1} +\dot{Z_2}\right)}{\dot{Z_1} +\dot{Z_2}}}$
$=\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V_1} +\dot{Z_1}\dot{V_2}}{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_3}\dot{Z_1} +\dot{Z_3}\dot{Z_2}}$
$\therefore\dot{I} =\dfrac{\dot{Z_2}\dot{V_1} +\dot{Z_1}\dot{V_2}}{\dot{Z_1}\dot{Z_2} +\dot{Z_2}\dot{Z_3} +\dot{Z_3}\dot{Z_1}}$ (インピーダンス $\dot{Z_3}$ に流れる電流 $\dot{I}$ )
となり、この電流 $\dot{I}$ がインピーダンス $\dot{Z_3}$ に流れる電流になります。
以上で、「電源が2つ、インピーダンスが3つある回路」のインピーダンス $\dot{Z_3}$ に流れる電流 $\dot{I}$ が求められました。
続いて、テブナンの定理を証明してみます。
交流回路のテブナンの定理の証明
重ね合わせの理を用いて、テブナンの定理の証明をしてみます。
次の図2のような電源を含む回路があるとして、この回路のインピーダンス $\dot{Z}$ を取り外したときの端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の開放電圧は $\dot{V_0}$ 、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の合成インピーダンスは $\dot{Z_0}$ であるものとします。
端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の合成インピーダンス $\dot{Z_0}$ は、インピーダンス $\dot{Z}$ を取り外して、電圧源を短絡し、電流源を開放したときの合成インピーダンスです。
この回路の端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間に、電圧 $\dot{V_0}$ の電圧源(端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の開放電圧と同じ電圧の電圧源)を2つ互いに逆向きになるように追加(接続)します。
追加した2つの電圧源は電圧の大きさが同じで互いに逆向きなので、2つの電圧源による電圧は打ち消されます。そのため、この2つの電圧源は回路の電圧や電流に影響を与えません。
インピーダンス $\dot{Z}$ に流れる電流 $\dot{I}$ を重ね合わせの理により求めるため、図3の回路から次の2つの回路(図4と図5)をつくります。図4は追加した下側の電圧源だけを取り除いた回路で、図5は追加した下側の電圧源だけを残して他の電源を取り除いた回路です。
重ね合わせの理の場合も、電源を取り除くときはテブナンの定理と同じように、電圧源は短絡し、電流源は開放します。
図4の回路では、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の開放電圧 $\dot{V_0}$ と同じ大きさで逆向き(極性が逆)の電圧源が接続されているので、インピーダンス $\dot{Z}$ には電流が流れません。したがって、図4の回路のインピーダンス $\dot{Z}$ に流れる電流 $\dot{I^\prime}$[$\mathrm{A}$]は、
$\therefore\dot{I^\prime} =0$ …④
となります。
また、図5の回路では、インピーダンス $\dot{Z}$ を取り外したときの端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の合成インピーダンスが $\dot{Z_0}$ なので、図5の回路のインピーダンス $\dot{Z}$ に流れる電流 $\dot{I^{\prime\prime}}$[$\mathrm{A}$]は、
$\dot{I^{\prime\prime}} =\dfrac{\dot{V_0}}{\dot{Z_0} +\dot{Z}}$ …⑤
となります。
以上で求めた④と⑤の電流を重ね合わせるとインピーダンス $\dot{Z}$ に流れる電流 $\dot{I}$ になるので、④と⑤を足し合わせて電流 $\dot{I}$ を求めると、
$\dot{I} =\dot{I^\prime} +\dot{I^{\prime\prime}} =0+\dfrac{\dot{V_0}}{\dot{Z_0} +\dot{Z}}$
$\therefore\dot{I} =\dfrac{\dot{V_0}}{\dot{Z_0} +\dot{Z}}$ (電流 $\dot{I}$ )
となり、重ね合わせの理により求めた電流 $\dot{I}$ は、テブナンの定理の式と同じ式になります。(証明終わり)
ちなみに、インピーダンス $\dot{Z}$ に流れる電流が $\dot{I} =\dfrac{\dot{V_0}}{\dot{Z_0} +\dot{Z}}$ で表わせられるということは、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ より左側の回路は、次のように「内部インピーダンスがある1つの電圧源」(テブナンの等価電圧源)で等価的に置き換えることができるということも示しています。
テブナンの定理はおぼえておくと回路の計算をするときに役に立つ定理ですので、テブナンの定理の使い方はおぼえておくようにしましょう!
- テブナンの定理は、電源を含む回路において、ある特定の素子に流れる電流を求めたいときに有用な定理
- 開放電圧 $\dot{V_0}$ と開放した端子間の合成インピーダンス $\dot{Z_0}$(電圧源は短絡し、電流源は開放する)が分かれば、$\dot{I} =\dfrac{\dot{V_0}}{\dot{Z_0} +\dot{Z}}$ でインピーダンス $\dot{Z}$ に流れる電流 $\dot{I}$ を求められる
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このページでは交流回路でテブナンの定理を解説しましたが、テブナンの定理は直流回路でも成り立ちます。直流回路でのテブナンの定理の解説については、こちらのテブナンの定理のページを参考にしてみてください。こちらのページでは、テブナンの定理を用いたブリッジ回路の計算もしています。
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- RC並列回路(交流回路)の各素子に流れる電流、回路全体に流れる電流、位相差の計算方法について解説しています。RC並列回路の電圧と電流のベクトル図の描き方についても解説していますので、RC並列回路の計算やベクトル図の描き方の参考にしてみてください。
- 交流回路の電圧と電流の計算とベクトル図(LC並列回路)
- LC並列回路(交流回路)の各素子に流れる電流と、回路全体に流れる電流の計算方法について解説しています。LC並列回路の電圧と電流のベクトル図の描き方についても解説していますので、LC並列回路の計算やベクトル図の描き方の参考にしてみてください。
- 交流回路の電圧と電流の計算とベクトル図(RLC並列回路)
- RLC並列回路(交流回路)の各素子に流れる電流、回路全体に流れる電流、位相差の計算方法について解説しています。RLC並列回路の電圧と電流のベクトル図の描き方についても解説していますので、RLC並列回路の計算やベクトル図の描き方の参考にしてみてください。
- RL直列回路の電圧と電流の計算(電源の電圧を基準にした場合)
- RL直列回路の回路に流れる電流と各素子にかかる電圧を電源の電圧を基準にして計算していますので、RL直列回路の電圧と電流の計算方法の参考にしてみてください。
- RC直列回路の電圧と電流の計算(電源の電圧を基準にした場合)
- RC直列回路の回路に流れる電流と各素子にかかる電圧を電源の電圧を基準にして計算していますので、RC直列回路の電圧と電流の計算方法の参考にしてみてください。
- RLC直列回路の電圧と電流の計算(電源の電圧を基準にした場合)
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- 交流回路の電力の計算(抵抗だけの回路)
- 負荷が抵抗だけの場合の交流回路の電力(瞬時電力、平均電力)の計算方法(求め方)、電力の波形などについて解説しています。
- 交流回路の電力の計算(コイルだけの回路)
- 負荷がコイルだけの場合の交流回路の電力(瞬時電力、平均電力)の計算方法(求め方)、電力の波形などについて解説しています。
- 交流回路の電力の計算(コンデンサだけの回路)
- 負荷がコンデンサだけの場合の交流回路の電力(瞬時電力、平均電力)の計算方法(求め方)、電力の波形などについて解説しています。
- 交流回路の電力の計算(RL直列回路)
- RL直列回路の電力(瞬時電力、平均電力)の計算方法(求め方)、電力の波形などについて解説しています。
- 交流回路の電力の計算(RC直列回路)
- RC直列回路の電力(瞬時電力、平均電力)の計算方法(求め方)、電力の波形などについて解説しています。
- 有効・無効・皮相電力
- 交流回路には「有効電力」「無効電力」「皮相電力」の3種類の電力があります。それぞれの電力の求め方と、3つの電力の関係について解説しています。
- 力率とは?(力率と電力の関係)
- 交流回路の勉強をしていると「力率」がでてきますが、力率って何でしょうか?力率の式の表し方には色々ありますが、ここでは、力率と皮相電力、有効電力、無効電力の関係とその関係式などについて解説します。
- 力率とは?(力率と位相の関係)
- 交流回路の勉強をしていると「力率(cosΘ)」がでてきますが、力率って何でしょうか?力率の式の表し方には色々ありますが、ここでは、位相と力率の関係について抵抗、コイル、コンデンサの回路を例に解説しています。
- 波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の求め方
- 波形は色々ありますが、その波形の特性を表わす値として実効値、平均値、最大値、波形率、波高率などがあります。ここでは、波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の定義式、求め方について解説しています。
- 正弦波波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法
- 波形は色々ありますが、その波形の特性を表わす値として実効値、平均値、最大値、波形率、波高率などがあります。ここでは、正弦波波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法、求め方について解説しています。
- 全波整流波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法
- 波形は色々ありますが、その波形の特性を表わす値として実効値、平均値、最大値、波形率、波高率などがあります。ここでは、全波整流波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法、求め方について解説しています。
- 半波整流波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法
- 半波整流波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法、求め方について解説しています。波形の特性を表わす値として実効値、平均値、最大値、波形率、波高率などがありますが、これらは大事な値ですので、求め方、計算方法をおぼえておきましょう。
- 方形波波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法
- 方形波波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法、求め方について解説しています。方形波波形の場合、実効値と平均値と最大値が同じ値、波形率と波高率が同じ値になります。ちなみに、方形波と矩形波は同じです。
- のこぎり波波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法
- のこぎり波波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法、求め方について解説しています。のこぎり波波形の実効値と平均値を求めるためには、のこぎり波波形の式から考えないといけないので、他の波形よりも計算がちょっと大変です。
- 三相電力の公式はなぜ√3倍なのか?(三相電力の公式の導出)
- 三相電力の公式はP=√3VIcosφで表わされますが、なぜ√3倍になるのか?スター結線の場合とデルタ結線の場合それぞれについて、三相電力の公式を導出してみました。この三相電力の公式は電験三種の「理論」「電力」科目の問題を解くときに度々使われる基本的な公式ですのでおぼえておくようにしましょう。
- スター結線(Y結線)の線間電圧はなぜ相電圧の√3倍になるのか?
- スター結線(Y結線)されている三相交流回路の線間電圧は相電圧の√3倍になりますが、なぜ√3倍になるのか?スター結線のときの線間電圧と相電圧のベクトル図を求め、求めたベクトル図から√3倍になる理由について解説しています。
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- デルタスター変換(Δ→Y変換)について解説しています。デルタ結線(Δ結線)を等価なスター結線(Y結線)に変換するのをデルタスター変換(Δ→Y変換)といいます。デルタスター変換の式の導出方法についても解説していますので参考にしてみてください。
- スターデルタ変換(Y→Δ変換)
- スターデルタ変換(Y→Δ変換)について解説しています。スター結線(Y結線)を等価なデルタ結線(Δ結線)に変換するのをスターデルタ変換(Y→Δ変換)といいます。スターデルタ変換の式の導出方法についても解説していますので参考にしてみてください。