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交流回路の電圧と電流の計算とベクトル図(RC直列回路)
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正弦波交流電源に、$R$[$\Omega$]の抵抗と静電容量 $C$[$\mathrm{F}$]のコンデンサが直列に接続されている次のようなRC直列回路があるとします。
図のように、抵抗( $R$ )とコンデンサ( $C$ )が直列に接続されている回路をRC直列回路といいます。
このRC直列回路において、正弦波交流電源の角周波数を $\omega$[$\mathrm{rad/s}$]、回路に流れる電流を $\dot{I} =I$( $\dot{I} =I+j\, 0$ )[$\mathrm{A}$]として、この回路の各素子にかかる電圧( $V_R$[$\mathrm{V}$]、$V_C$[$\mathrm{V}$])と直列接続全体にかかる電圧( $V$[$\mathrm{V}$])を計算して求めてみます。
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RC直列回路の各素子にかかる電圧
初めに、RC直列回路の各素子にかかる電圧( $V_R$:抵抗 $R$ にかかる電圧 $\dot{V_R}$ の大きさ、$V_C$:コンデンサ $C$ にかかる電圧 $\dot{V_C}$ の大きさ)を求めてみます。
抵抗Rにかかる電圧
抵抗 $R$ に流れる電流は $\dot{I}$ 、抵抗 $R$ のインピーダンスは $R$[$\Omega$]なので、抵抗 $R$ にかかる電圧 $\dot{V_R}$ と電流 $\dot{I}$ の関係は次のように表わせます。
$\dot{V_R} =R\dot{I}$ …①
この回路は抵抗 $R$ とコンデンサ $C$ が直列接続された回路なので、抵抗 $R$ とコンデンサ $C$ には同じ電流 $\dot{I}$ が流れますよ!
①式より電圧 $\dot{V_R}$ を求めると、
$\dot{V_R} =R\dot{I}$
$=RI$ ($\dot{I} =I$ としているので $\dot{I}$ を $I$ とした)
$\therefore\dot{V_R} =RI$ …② (電圧 $\dot{V_R}$ )
となります。この電圧 $\dot{V_R}$ の大きさが電圧 $V_R$ になるので、電圧 $V_R$ は、
$V_R=|\dot{V_R} |$ ($\dot{V_R}$ の絶対値が $\dot{V_R}$ の大きさ(電圧 $V_R$ )になる)
$=|RI|=RI$
$\therefore V_R=RI$ …③ (電圧 $V_R$ )
となり、この電圧 $V_R$(③式)がRC直列回路の抵抗 $R$ にかかる電圧の大きさになります。(オームの法則そのままの式ですね。)
コンデンサCにかかる電圧
コンデンサ $C$ に流れる電流は $\dot{I}$ 、コンデンサ $C$ のインピーダンスは $\dfrac{1}{j\omega C}$[$\Omega$]なので、コンデンサ $C$ にかかる電圧 $\dot{V_C}$ と電流 $\dot{I}$ の関係は次のように表わせます。
$\dot{V_C} =\dfrac{1}{j\omega C}\dot{I}$ …④
この④式より電圧 $\dot{V_C}$ を求めると、
$\dot{V_C} =\dfrac{\dot{I}}{j\omega C}$
$=\dfrac{I}{j\omega C}$ ($\dot{I} =I$ としているので $\dot{I}$ を $I$ とした)
$=-\dfrac{jI}{\omega C}$ (分母と分子に $j$ をかけた)
$\therefore\dot{V_C} =-j\dfrac{I}{\omega C}$ …⑤ (電圧 $\dot{V_C}$ )
となります。この電圧 $\dot{V_C}$ の大きさが電圧 $V_C$ になるので、電圧 $V_C$ は、
$V_C=|\dot{V_C} |$ ($\dot{V_C}$ の絶対値が $\dot{V_C}$ の大きさ(電圧 $V_C$ )になる)
$=\sqrt{\left(\dfrac{I}{\omega C}\right)^2}$
$=\dfrac{I}{\omega C}$
$\therefore V_C=\dfrac{I}{\omega C}$ …⑥ (電圧 $V_C$ )
となり、この電圧 $V_C$(⑥式)がRC直列回路のコンデンサ $C$ にかかる電圧の大きさになります。
コンデンサ $C$ のリアクタンスを $X_C$( $=\dfrac{1}{\omega C}$ )[$\Omega$]とすると、電圧 $V_C$ は、$V_C=X_CI$ とも表わせます。
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RC直列回路の直列接続全体にかかる電圧
次に、RC直列回路の直列接続全体にかかる電圧 $V$(直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ の大きさ)を求めてみます。
この回路は抵抗 $R$ とコンデンサ $C$ が直列接続された回路なので、回路のインピーダンス $\dot{Z}$[$\Omega$]は、
$\dot{Z} =R+\dfrac{1}{j\omega C}$
となります。
RC直列回路のインピーダンス $\dot{Z}$ は、抵抗 $R$ のインピーダンス $\dot{Z_R}$ とコンデンサ $C$ のインピーダンス $\dot{Z_C}$ の和で表わされるので、$\dot{Z} =\dot{Z_R} +\dot{Z_C}$ $=R+\dfrac{1}{j\omega C}$ になります。
なので、この回路の直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ と電流 $\dot{I}$ の関係は次のように表わせます。
$\dot{V} =\left( R+\dfrac{1}{j\omega C}\right)\dot{I}$ …⑦
この⑦式より電圧 $\dot{V}$ を求めると、
$\dot{V} =\left( R+\dfrac{1}{j\omega C}\right)\dot{I}$
$=\left( R+\dfrac{1}{j\omega C}\right) I$ ($\dot{I} =I$ としているので $\dot{I}$ を $I$ とした)
$=RI+\dfrac{I}{j\omega C}$
$=RI-j\dfrac{I}{\omega C}$ ($\dfrac{I}{j\omega C}$ の分母と分子に $j$ をかけた)
$\therefore\dot{V} =RI-j\dfrac{I}{\omega C}$ …⑧ (電圧 $\dot{V}$ )
となります。この電圧 $\dot{V}$ の大きさが電圧 $V$ になるので、電圧 $V$ は、
$V=|\dot{V} |$ ($\dot{V}$ の絶対値が $\dot{V}$ の大きさ(電圧 $V$ )になる)
$=\sqrt{\left( RI\right)^2 +\left(\dfrac{I}{\omega C}\right)^2}$
$=\sqrt{\left\{ R^2+\left(\dfrac{1}{\omega C}\right)^2\right\} I^2}$
$=I\sqrt{R^2 +\left(\dfrac{1}{\omega C}\right)^2}$
$\therefore V=I\sqrt{R^2+\left(\dfrac{1}{\omega C}\right)^2}$ …⑨ (電圧 $V$ )
となり、この電圧 $V$(⑨式)がRC直列回路の直列接続全体にかかる電圧の大きさになります。
コンデンサ $C$ のリアクタンスを $X_C$( $=\dfrac{1}{\omega C}$ )とすると、電圧 $V$ は、$V=I\sqrt{R^2+{X_C}^2}$ とも表わせます。
ちなみに、この回路は抵抗 $R$ とコンデンサ $C$ が直列接続された回路なので、直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ は、抵抗 $R$ にかかる電圧 $\dot{V_R}$ とコンデンサ $C$ にかかる電圧 $\dot{V_C}$ のベクトル和 $\dot{V} =\dot{V_R} +\dot{V_C}$ でも表わすことができるので、
さきほど計算して求めた②式(電圧 $\dot{V_R}$ )と⑤式(電圧 $\dot{V_C}$ )を使って、直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ を次のようにして求めることもできます。
$\dot{V} =\dot{V_R} +\dot{V_C}$
$=RI+\left( -j\dfrac{I}{\omega C}\right)$ ($\dot{V_R}$ に $RI$ 、$\dot{V_C}$ に $-j\dfrac{I}{\omega C}$ を代入した)
$=RI-j\dfrac{I}{\omega C}$
$\therefore\dot{V} =RI-j\dfrac{I}{\omega C}$ …⑩ (②式と⑤式を使って求めた電圧 $\dot{V}$ )
⑩式は、さきほど計算して求めた⑧式(電圧 $\dot{V}$ )と一致します。
以上で、抵抗 $R$ にかかる電圧 $V_R$ 、コンデンサ $C$ にかかる電圧 $V_C$ 、直列接続全体にかかる電圧 $V$ が求められたので、続いて、RC直列回路の電圧と電流のベクトル図の描き方と位相差の求め方について解説します。
RC直列回路の電圧と電流のベクトル図
RC直列回路の電圧と電流のベクトル図も描いてみましょう。
RC直列回路のように直列接続の回路の場合は、一般に、電流のベクトルを基準にして描いていくとベクトル図を描きやすいです。なので、ここでも電流のベクトルを基準にしてRC直列回路の電圧と電流のベクトル図を描いてみます。
まず、基準のベクトルになる電流 $\dot{I}$ を描きます。
抵抗 $R$ にかかる電圧 $\dot{V_R}$ は $\dot{V_R} =R\dot{I}$ と表わされるので、電圧 $\dot{V_R}$ のベクトルの向きは、電流 $\dot{I}$ のベクトルと同じ向きになります。
$\dot{V_R} =R\dot{I}$ は、ベクトル $\dot{I}$ を $R$ 倍したのがベクトル $\dot{V_R}$ になるということを表わしています。
$\dot{V_R}$ と $\dot{I}$ は同じ向きなので、電圧 $\dot{V_R}$ は電流 $\dot{I}$ と同相(位相のずれがない)ということになります。
コンデンサ $C$ にかかる電圧 $\dot{V_C}$ は $\dot{V_C} =\dfrac{1}{j\omega C}\dot{I} =-j\dfrac{1}{\omega C}\dot{I}$ と表わされるので、電圧 $\dot{V_C}$ のベクトルの向きは、電流 $\dot{I}$ のベクトルを時計方向に90°回転した向きになります。
$\dot{V_C} =-j\dfrac{1}{\omega C}\dot{I}$ は、ベクトル $\dot{I}$ を $\dfrac{1}{\omega C}$ 倍して時計方向に90°回転したのがベクトル $\dot{V_C}$ になるということを表わしています。(ベクトルに「 $-j$ 」を1回かけると、ベクトルは時計方向に90°回転します。)
$\dot{V_C}$ の向きは $\dot{I}$ を時計方向に90°回転した向きになるので、電圧 $\dot{V_C}$ は電流 $\dot{I}$ より $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$](90°)位相が遅れている(言い換えれば、電流 $\dot{I}$ は電圧 $\dot{V_C}$ より $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$](90°)位相が進んでいる)ということになります。
直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ は抵抗 $R$ にかかる電圧 $\dot{V_R}$ とコンデンサ $C$ にかかる電圧 $\dot{V_C}$ の和(ベクトル和)$\dot{V} =\dot{V_R} +\dot{V_C}$ で表わされるので、直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ は電圧 $\dot{V_R}$ と電圧 $\dot{V_C}$ のベクトルを合成したベクトルになります。
以上より、RC直列回路の電圧と電流のベクトル図は次のようになり、直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ は回路に流れる電流 $\dot{I}$ より位相が遅れている(言い換えれば、回路に流れる電流 $\dot{I}$ は直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ より位相が進んでいる)のが分かります。
なお、各ベクトルの大きさ(長さ)は、それぞれさきほど計算した $V_R$ 、$V_C$ 、$V$ になるので( $\dot{I}$ の大きさは $I$ で、$\dot{V}$ の大きさは $V_R$ と $V_C$ で表わすと $V=\sqrt{{V_R}^2+{V_C}^2}$ になる)、
ベクトル図より電流 $\dot{I}$ に対する電圧 $\dot{V}$ の位相差 $\theta$[$\mathrm{rad}$]を求めると、
$\tan\theta =\dfrac{-V_C}{V_R}$ より、
$\theta =\tan^{-1}\dfrac{-V_C}{V_R}$ ($\tan^{-1}$ は $\tan$ の逆三角関数です)
$=-\tan^{-1}\dfrac{V_C}{V_R}$
$=-\tan^{-1}\dfrac{\dfrac{I}{\omega C}}{RI}$ ($V_C$ に $\dfrac{I}{\omega C}$ 、$V_R$ に $RI$ を代入した)
$=-\tan^{-1}\dfrac{\dfrac{1}{\omega C}}{R}$
$=-\tan^{-1}\dfrac{1}{\omega CR}$
$\therefore\theta =-\tan^{-1}\dfrac{1}{\omega CR}$ ($位相差 \theta$ )
となります。
コンデンサ $C$ のリアクタンスを $X_C$( $=\dfrac{1}{\omega C}$ )とすると、$\theta$ は、$\theta =-\tan^{-1}\dfrac{X_C}{R}$ とも表わせます。
以上で、RC直列回路の電圧と電流のベクトル図と位相差が求められました。
- 抵抗 $R$ にかかる電圧 $V_R$
$V_R=RI$
- コンデンサ $C$ にかかる電圧 $V_C$
$V_C=\dfrac{I}{\omega C}$
- RC直列回路の直列接続全体にかかる電圧 $V$
$V=I\sqrt{R^2+\left(\dfrac{1}{\omega C}\right)^2}$
- RC直列回路の電圧と電流のベクトル図と位相差
位相差: $\theta =-\tan^{-1}\dfrac{1}{\omega CR}$
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このページでは回路に流れる電流を基準( $\dot{I} =I$( $\dot{I} =I+j\, 0$ ))にしてRC直列回路の計算をしましたが、電源の電圧を基準( $\dot{V} =V$( $\dot{V} =V+j\, 0$ ))にしてもRC直列回路の計算をすることができます。電源の電圧を基準にした場合のRC直列回路の計算方法については、こちらのRC直列回路の電圧と電流の計算(電源の電圧を基準にした場合)のページを参考にしてみてください。
RC直列回路のインピーダンスについてはこちら
⇒ 交流回路の合成インピーダンスの計算(素子が2個直列接続の場合)
RC直列回路の電力の計算についてはこちら
⇒ 交流回路の電力の計算(RC直列回路)
を参考にしてみてください。
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