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交流回路の電圧と電流の計算とベクトル図(RL直列回路)

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正弦波交流電源に、$R$[$\Omega$]の抵抗とインダクタンス $L$[$\mathrm{H}$]のコイルが直列に接続されている次のようなRL直列回路があるとします。

 

RL直列回路

 

図のように、抵抗( $R$ )とコイル( $L$ )が直列に接続されている回路をRL直列回路といいます。

 

このRL直列回路において、正弦波交流電源の角周波数を $\omega$[$\mathrm{rad/s}$]、回路に流れる電流を $\dot{I} =I$( $\dot{I} =I+j\, 0$ )[$\mathrm{A}$]として、この回路の各素子にかかる電圧( $V_R$[$\mathrm{V}$]、$V_L$[$\mathrm{V}$])と直列接続全体にかかる電圧( $V$[$\mathrm{V}$])を計算して求めてみます。

 

RL直列回路の各電圧と電流

 

 

RL直列回路の各素子にかかる電圧

初めに、RL直列回路の各素子にかかる電圧( $V_R$:抵抗 $R$ にかかる電圧 $\dot{V_R}$ の大きさ、$V_L$:コイル $L$ にかかる電圧 $\dot{V_L}$ の大きさ)を求めてみます。

 

抵抗Rにかかる電圧

 

RL直列回路の電圧VR

 

抵抗 $R$ に流れる電流は $\dot{I}$ 、抵抗 $R$ のインピーダンスは $R$[$\Omega$]なので、抵抗 $R$ にかかる電圧 $\dot{V_R}$ と電流 $\dot{I}$ の関係は次のように表わせます。

 

$\dot{V_R} =R\dot{I}$ …①

 

この回路は抵抗 $R$ とコイル $L$ が直列接続された回路なので、抵抗 $R$ とコイル $L$ には同じ電流 $\dot{I}$ が流れますよ!

 

①式より電圧 $\dot{V_R}$ を求めると、

 

$\dot{V_R} =R\dot{I}$

 

$=RI$ ($\dot{I} =I$ としているので $\dot{I}$ を $I$ とした

 

$\therefore\dot{V_R} =RI$ …② (電圧 $\dot{V_R}$

 

となります。この電圧 $\dot{V_R}$ の大きさが電圧 $V_R$ になるので、電圧 $V_R$ は、

 

$V_R=|\dot{V_R} |$ ($\dot{V_R}$ の絶対値が $\dot{V_R}$ の大きさ(電圧 $V_R$ )になる

 

$=|RI|=RI$

 

$\therefore V_R=RI$ …③ (電圧 $V_R$

 

となり、この電圧 $V_R$(③式)がRL直列回路の抵抗 $R$ にかかる電圧の大きさになります。(オームの法則そのままの式ですね。)

 

RL直列回路の抵抗にかかる電圧の大きさ

 

コイルLにかかる電圧

 

RL直列回路の電圧VL

 

コイル $L$ に流れる電流は $\dot{I}$ 、コイル $L$ のインピーダンスは $j\omega L$[$\Omega$]なので、コイル $L$ にかかる電圧 $\dot{V_L}$ と電流 $\dot{I}$ の関係は次のように表わせます。

 

$\dot{V_L} =j\omega L\dot{I}$ …④

 

この④式より電圧 $\dot{V_L}$ を求めると、

 

$\dot{V_L} =j\omega L\dot{I}$

 

$=j\omega LI$ ($\dot{I} =I$ としているので $\dot{I}$ を $I$ とした

 

$\therefore\dot{V_L} =j\omega LI$ …⑤ (電圧 $\dot{V_L}$

 

となります。この電圧 $\dot{V_L}$ の大きさが電圧 $V_L$ になるので、電圧 $V_L$ は、

 

$V_L=|\dot{V_L} |$ ($\dot{V_L}$ の絶対値が $\dot{V_L}$ の大きさ(電圧 $V_L$ )になる

 

$=\sqrt{\left(\omega LI\right)^2}$

 

$=\omega LI$

 

$\therefore V_L=\omega LI$ …⑥ (電圧 $V_L$

 

となり、この電圧 $V_L$(⑥式)がRL直列回路のコイル $L$ にかかる電圧の大きさになります。

 

RL直列回路のコイルにかかる電圧の大きさ

 

コイル $L$ のリアクタンスを $X_L$( $=\omega L$ )[$\Omega$]とすると、電圧 $V_L$ は、$V_L=X_LI$ とも表わせます。

 

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RL直列回路の直列接続全体にかかる電圧

次に、RL直列回路の直列接続全体にかかる電圧 $V$(直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ の大きさ)を求めてみます。

 

RL直列回路の直列接続全体にかかる電圧V

 

この回路は抵抗 $R$ とコイル $L$ が直列接続された回路なので、回路のインピーダンス $\dot{Z}$[$\Omega$]は、

 

$\dot{Z} =R+j\omega L$

 

となります。

 

RL直列回路のインピーダンス $\dot{Z}$ は、抵抗 $R$ のインピーダンス $\dot{Z_R}$ とコイル $L$ のインピーダンス $\dot{Z_L}$ の和で表わされるので、$\dot{Z} =\dot{Z_R} +\dot{Z_L}$ $=R+j\omega L$ になります。

 

なので、この回路の直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ と電流 $\dot{I}$ の関係は次のように表わせます。

 

$\dot{V} =\left( R+j\omega L\right)\dot{I}$ …⑦

 

この⑦式より電圧 $\dot{V}$ を求めると、

 

$\dot{V} =\left( R+j\omega L\right)\dot{I}$

 

$=\left( R+j\omega L\right) I$ ($\dot{I} =I$ としているので $\dot{I}$ を $I$ とした

 

$=RI+j\omega LI$

 

$\therefore\dot{V} =RI+j\omega LI$ …⑧ (電圧 $\dot{V}$

 

となります。この電圧 $\dot{V}$ の大きさが電圧 $V$ になるので、電圧 $V$ は、

 

$V=|\dot{V} |$ ($\dot{V}$ の絶対値が $\dot{V}$ の大きさ(電圧 $V$ )になる

 

$=\sqrt{\left( RI\right)^2 +\left(\omega LI\right)^2}$

 

$=\sqrt{\left\{ R^2+\left(\omega L\right)^2\right\} I^2}$

 

$=I\sqrt{R^2 +\left(\omega L\right)^2}$

 

$\therefore V=I\sqrt{R^2+\left(\omega L\right)^2}$ …⑨ (電圧 $V$

 

となり、この電圧 $V$(⑨式)がRL直列回路の直列接続全体にかかる電圧の大きさになります。

 

RL直列回路の直列接続全体にかかる電圧の大きさ

 

コイル $L$ のリアクタンスを $X_L$( $=\omega L$ )とすると、電圧 $V$ は、$V=I\sqrt{R^2+{X_L}^2}$ とも表わせます。

 

ちなみに、この回路は抵抗 $R$ とコイル $L$ が直列接続された回路なので、直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ は、抵抗 $R$ にかかる電圧 $\dot{V_R}$ とコイル $L$ にかかる電圧 $\dot{V_L}$ のベクトル和 $\dot{V} =\dot{V_R} +\dot{V_L}$ でも表わすことができるので、

 

RL直列回路の直列接続全体にかかる電圧は各素子にかかる電圧のベクトル和

 

さきほど計算して求めた②式(電圧 $\dot{V_R}$ )と⑤式(電圧 $\dot{V_L}$ )を使って、直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ を次のようにして求めることもできます。

 

$\dot{V} =\dot{V_R} +\dot{V_L}$

 

$=RI+j\omega LI$ ($\dot{V_R}$ に $RI$ 、$\dot{V_L}$ に $j\omega LI$ を代入した

 

$\therefore\dot{V} =RI+j\omega LI$ …⑩ (②式と⑤式を使って求めた電圧 $\dot{V}$

 

⑩式は、さきほど計算して求めた⑧式(電圧 $\dot{V}$ )と一致します。

 

以上で、抵抗 $R$ にかかる電圧 $V_R$ 、コイル $L$ にかかる電圧 $V_L$ 、直列接続全体にかかる電圧 $V$ が求められたので、続いて、RL直列回路の電圧と電流のベクトル図の描き方と位相差の求め方について解説します。

 

 

RL直列回路の電圧と電流のベクトル図

RL直列回路の電圧と電流のベクトル図も描いてみましょう。

 

RL直列回路のように直列接続の回路の場合は、一般に、電流のベクトルを基準にして描いていくとベクトル図を描きやすいです。なので、ここでも電流のベクトルを基準にしてRL直列回路の電圧と電流のベクトル図を描いてみます。

 

まず、基準のベクトルになる電流 $\dot{I}$ を描きます。

 

RL直列回路に流れる電流のベクトル

 

抵抗 $R$ にかかる電圧 $\dot{V_R}$ は $\dot{V_R} =R\dot{I}$ と表わされるので、電圧 $\dot{V_R}$ のベクトルの向きは、電流 $\dot{I}$ のベクトルと同じ向きになります。

 

RL直列回路の抵抗にかかる電圧のベクトル

 

$\dot{V_R} =R\dot{I}$ は、ベクトル $\dot{I}$ を $R$ 倍したのがベクトル $\dot{V_R}$ になるということを表わしています。
$\dot{V_R}$ と $\dot{I}$ は同じ向きなので、電圧 $\dot{V_R}$ は電流 $\dot{I}$ と同相(位相のずれがない)ということになります。

 

コイル $L$ にかかる電圧 $\dot{V_L}$ は $\dot{V_L} =j\omega L\dot{I}$ と表わされるので、電圧 $\dot{V_L}$ のベクトルの向きは、電流 $\dot{I}$ のベクトルを反時計方向に90°回転した向きになります。

 

RL直列回路のコイルにかかる電圧のベクトル

 

$\dot{V_L} =j\omega L\dot{I}$ は、ベクトル $\dot{I}$ を $\omega L$ 倍して反時計方向に90°回転したのがベクトル $\dot{V_L}$ になるということを表わしています。(ベクトルに「 $j$ 」を1回かけると、ベクトルは反時計方向に90°回転します。)
$\dot{V_L}$ の向きは $\dot{I}$ を反時計方向に90°回転した向きになるので、電圧 $\dot{V_L}$ は電流 $\dot{I}$ より $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$](90°)位相が進んでいる(言い換えれば、電流 $\dot{I}$ は電圧 $\dot{V_L}$ より $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$](90°)位相が遅れている)ということになります。

 

直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ は抵抗 $R$ にかかる電圧 $\dot{V_R}$ とコイル $L$ にかかる電圧 $\dot{V_L}$ の和(ベクトル和)$\dot{V} =\dot{V_R} +\dot{V_L}$ で表わされるので、直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ は電圧 $\dot{V_R}$ と電圧 $\dot{V_L}$ のベクトルを合成したベクトルになります。

 

RL直列回路の直列接続全体にかかる電圧のベクトル

 

以上より、RL直列回路の電圧と電流のベクトル図は次のようになり、直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ は回路に流れる電流 $\dot{I}$ より位相が進んでいる(言い換えれば、回路に流れる電流 $\dot{I}$ は直列接続全体にかかる電圧 $\dot{V}$ より位相が遅れている)のが分かります。

 

RL直列回路の電圧と電流のベクトル図

 

なお、各ベクトルの大きさ(長さ)は、それぞれさきほど計算した $V_R$ 、$V_L$ 、$V$ になるので( $\dot{I}$ の大きさは $I$ で、$\dot{V}$ の大きさは $V_R$ と $V_L$ で表わすと $V=\sqrt{{V_R}^2+{V_L}^2}$ になる)、

 

RL直列回路の各ベクトルの大きさ

 

ベクトル図より電流 $\dot{I}$ に対する電圧 $\dot{V}$ の位相差 $\theta$[$\mathrm{rad}$]を求めると、

 

$\tan\theta =\dfrac{V_L}{V_R}$ より、

 

$\theta =\tan^{-1}\dfrac{V_L}{V_R}$ ($\tan^{-1}$ は $\tan$ の逆三角関数です

 

$=\tan^{-1}\dfrac{\omega LI}{RI}$ ($V_L$ に $\omega LI$ 、$V_R$ に $RI$ を代入した

 

$=\tan^{-1}\dfrac{\omega L}{R}$

 

$\therefore\theta =\tan^{-1}\dfrac{\omega L}{R}$ (位相差 $\theta$

 

となります。

 

RL直列回路の位相差θ

 

コイル $L$ のリアクタンスを $X_L$( $=\omega L$ )とすると、$\theta$ は、$\theta =\tan^{-1}\dfrac{X_L}{R}$ とも表わせます。

 

以上で、RL直列回路の電圧と電流のベクトル図と位相差が求められました。

 

交流回路の電圧と電流の計算とベクトル図(RL直列回路)のまとめ

 

RL直列回路

 

  • 抵抗 $R$ にかかる電圧 $V_R$
    $V_R=RI$

 

  • コイル $L$ にかかる電圧 $V_L$
    $V_L=\omega LI$

 

  • RL直列回路の直列接続全体にかかる電圧 $V$
    $V=I\sqrt{R^2+\left(\omega L\right)^2}$

 

  • RL直列回路の電圧と電流のベクトル図と位相差
    RL直列回路の電圧と電流のベクトル図
    位相差: $\theta =\tan^{-1}\dfrac{\omega L}{R}$

 

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このページでは回路に流れる電流を基準( $\dot{I} =I$( $\dot{I} =I+j\, 0$ ))にしてRL直列回路の計算をしましたが、電源の電圧を基準( $\dot{V} =V$( $\dot{V} =V+j\, 0$ ))にしてもRL直列回路の計算をすることができます。電源の電圧を基準にした場合のRL直列回路の計算方法については、こちらのRL直列回路の電圧と電流の計算(電源の電圧を基準にした場合)のページを参考にしてみてください。

 

RL直列回路のインピーダンスについてはこちら
⇒ 交流回路の合成インピーダンスの計算(素子が2個直列接続の場合)
RL直列回路の電力の計算についてはこちら
⇒ 交流回路の電力の計算(RL直列回路)
を参考にしてみてください。



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