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交流回路の電圧と電流の計算とベクトル図(LC並列回路)
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電圧 $\dot{V}$[$\mathrm{V}$]の正弦波交流電源に、インダクタンス $L$[$\mathrm{H}$]のコイルと静電容量 $C$[$\mathrm{F}$]のコンデンサが並列に接続されている次のようなLC並列回路があるとします。
図のように、コイル( $L$ )とコンデンサ( $C$ )が並列に接続されている回路をLC並列回路といいます。
このLC並列回路において、正弦波交流電源の電圧を $\dot{V} =V$( $\dot{V} =V+j\, 0$ )[$\mathrm{V}$]、角周波数を $\omega$[$\mathrm{rad/s}$]として、この回路の各素子に流れる電流( $I_L$[$\mathrm{A}$]、$I_C$[$\mathrm{A}$])と回路全体に流れる電流( $I$[$\mathrm{A}$])を計算して求めてみます。
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LC並列回路の各素子に流れる電流
初めに、LC並列回路の各素子に流れる電流( $I_L$:コイル $L$ に流れる電流 $\dot{I_L}$ の大きさ、$I_C$:コンデンサ $C$ に流れる電流 $\dot{I_C}$ の大きさ)を求めてみます。
コイルLに流れる電流
コイル $L$ にかかる電圧は $\dot{V}$ 、コイル $L$ のアドミタンスは $\dfrac{1}{j\omega L}$[$\mathrm{S}$]なので、コイル $L$ に流れる電流 $\dot{I_L}$ と電圧 $\dot{V}$ の関係は次のように表わせます。
$\dot{I_L} =\dfrac{1}{j\omega L}\dot{V}$ …①
インピーダンスの逆数をアドミタンスといいます。コイル $L$ のインピーダンス $\dot{Z_L}$ は $\dot{Z_L} =j\omega L$ なので、コイル $L$ のアドミタンス $\dot{Y_L}$ は $\dot{Y_L} =\dfrac{1}{\dot{Z_L}} =\dfrac{1}{j\omega L}$ になります。
また、この回路は電源にコイル $L$ とコンデンサ $C$ が並列に接続された回路なので、電源の電圧 $\dot{V}$ がそのままコイル $L$ とコンデンサ $C$ にかかります(つまり、$\dot{V} =\dot{V_L} =\dot{V_C}$ )。
①式より電流 $\dot{I_L}$ を求めると、
$\dot{I_L} =\dfrac{\dot{V}}{j\omega L}$
$=\dfrac{V}{j\omega L}$ ($\dot{V} =V$ としているので $\dot{V}$ を $V$ とした)
$=-\dfrac{jV}{\omega L}$ (分母と分子に $j$ をかけた)
$\therefore\dot{I_L} =-j\dfrac{V}{\omega L}$ …② (電流 $\dot{I_L}$ )
となります。この電流 $\dot{I_L}$ の大きさが電流 $I_L$ になるので、電流 $I_L$ は、
$I_L=|\dot{I_L} |$ ($\dot{I_L}$ の絶対値が $\dot{I_L}$ の大きさ(電流 $I_L$ )になる)
$=\sqrt{\left(\dfrac{V}{\omega L}\right)^2}$
$=\dfrac{V}{\omega L}$
$\therefore I_L=\dfrac{V}{\omega L}$ …③ (電流 $I_L$ )
となり、この電流 $I_L$(③式)がLC並列回路のコイル $L$ に流れる電流の大きさになります。
コイル $L$ のリアクタンスを $X_L$( $=\omega L$ )[$\Omega$]とすると、電流 $I_L$ は、$I_L=\dfrac{V}{X_L}$ とも表わせます。
コンデンサCに流れる電流
コンデンサ $C$ にかかる電圧は $\dot{V}$ 、コンデンサ $C$ のアドミタンスは $j\omega C$[$\mathrm{S}$]なので、コンデンサ $C$ に流れる電流 $\dot{I_C}$ と電圧 $\dot{V}$ の関係は次のように表わせます。
$\dot{I_C} =j\omega C\dot{V}$ …④
コンデンサ $C$ のインピーダンス $\dot{Z_C}$ は $\dot{Z_C} =\dfrac{1}{j\omega C}$ なので、コンデンサ $C$ のアドミタンス $\dot{Y_C}$ は $\dot{Y_C} =\dfrac{1}{\dot{Z_C}} =j\omega C$ になります。
④式より電流 $\dot{I_C}$ を求めると、
$\dot{I_C} =j\omega C\dot{V}$
$=j\omega CV$ ($\dot{V} =V$ としているので $\dot{V}$ を $V$ とした)
$\therefore\dot{I_C} =j\omega CV$ …⑤ (電流 $\dot{I_C}$ )
となります。この電流 $\dot{I_C}$ の大きさが電流 $I_C$ になるので、電流 $I_C$ は、
$I_C=|\dot{I_C} |$ ($\dot{I_C}$ の絶対値が $\dot{I_C}$ の大きさ(電流 $I_C$ )になる)
$=\sqrt{\left(\omega CV\right)^2}$
$=\omega CV$
$\therefore I_C=\omega CV$ …⑥ (電流 $I_C$ )
となり、この電流 $I_C$(⑥式)がLC並列回路のコンデンサ $C$ に流れる電流の大きさになります。
コンデンサ $C$ のリアクタンスを $X_C$( $=\dfrac{1}{\omega C}$ )[$\Omega$]とすると、電流 $I_C$ は、$I_C=\omega CV=\dfrac{V}{\dfrac{1}{\omega C}} =\dfrac{V}{X_C}$ $\therefore I_C=\dfrac{V}{X_C}$ とも表わせます。
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LC並列回路の回路全体に流れる電流
次に、LC並列回路の回路全体に流れる電流 $I$(回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ の大きさ)を求めてみます。
この回路はコイル $L$ とコンデンサ $C$ が並列接続された回路なので、回路のアドミタンス $\dot{Y}$[$\mathrm{S}$]は、
$\dot{Y} =\dfrac{1}{j\omega L} +j\omega C$
となります。
LC並列回路のアドミタンス $\dot{Y}$ は、コイル $L$ のアドミタンス $\dot{Y_L}$ とコンデンサ $C$ のアドミタンス $\dot{Y_C}$ の和で表わされるので、$\dot{Y} =\dot{Y_L} +\dot{Y_C}$ $=\dfrac{1}{j\omega L} +j\omega C$ になります。
なので、この回路の電圧 $\dot{V}$ と電流 $\dot{I}$ の関係は次のように表わせます。
$\dot{I} =\left(\dfrac{1}{j\omega L} +j\omega C\right)\dot{V}$ …⑦
この⑦式より電流 $\dot{I}$ を求めると、
$\dot{I} =\left(\dfrac{1}{j\omega L} +j\omega C\right)\dot{V}$
$=\left(\dfrac{1}{j\omega L} +j\omega C\right) V$ ($\dot{V} =V$ としているので $\dot{V}$ を $V$ とした)
$=\dfrac{V}{j\omega L} +j\omega CV$
$=-j\dfrac{V}{\omega L} +j\omega CV$ ($\dfrac{V}{j\omega L}$ の分母と分子に $j$ をかけた)
$=j\left(\omega CV-\dfrac{V}{\omega L}\right)$
$\therefore\dot{I} =j\left(\omega CV-\dfrac{V}{\omega L}\right)$ …⑧ (電流 $\dot{I}$ )
となります。この電流 $\dot{I}$ の大きさが電流 $I$ になるので、電流 $I$ は、
$I=|\dot{I} |$ ($\dot{I}$ の絶対値が $\dot{I}$ の大きさ(電流 $I$ )になる)
$=\sqrt{\left(\omega CV-\dfrac{V}{\omega L}\right)^2}$
$=\sqrt{V^2\left(\omega C-\dfrac{1}{\omega L}\right)^2}$
$=V\sqrt{\left(\omega C-\dfrac{1}{\omega L}\right)^2}$
$=V\left|\omega C-\dfrac{1}{\omega L}\right|$
$\therefore I=V\left|\omega C-\dfrac{1}{\omega L}\right|$ …⑨ (電流 $I$ )
となり、この電流 $I$(⑨式)がLC並列回路全体に流れる電流の大きさになります。
コイル $L$ のリアクタンスを $X_L$( $=\omega L$ )、コンデンサ $C$ のリアクタンスを $X_C$( $=\dfrac{1}{\omega C}$ )とすると、電流 $I$ は、$I=V\left|\dfrac{1}{X_C} -\dfrac{1}{X_L}\right|$ とも表わせます。
ちなみに、この回路はコイル $L$ とコンデンサ $C$ が並列接続された回路なので、回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ は、コイル $L$ に流れる電流 $\dot{I_L}$ とコンデンサ $C$ に流れる電流 $\dot{I_C}$ のベクトル和 $\dot{I} =\dot{I_L} +\dot{I_C}$ でも表わすことができるので、
さきほど計算して求めた②式(電流 $\dot{I_L}$ )と⑤式(電流 $\dot{I_C}$ )を使って、回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ を次のようにして求めることもできます。
$\dot{I} =\dot{I_L} +\dot{I_C}$
$=\left( -j\dfrac{V}{\omega L}\right) +j\omega CV$ ($\dot{I_L}$ に $-j\dfrac{V}{\omega L}$ 、$\dot{I_C}$ に $j\omega CV$ を代入した)
$=-j\dfrac{V}{\omega L} +j\omega CV$
$=j\left(\omega CV-\dfrac{V}{\omega L}\right)$
$\therefore\dot{I} =j\left(\omega CV-\dfrac{V}{\omega L}\right)$ …⑩ (②式と⑤式を使って求めた電流 $\dot{I}$ )
⑩式は、さきほど計算して求めた⑧式(電流 $\dot{I}$ )と一致します。
以上で、コイル $L$ に流れる電流 $I_L$ 、コンデンサ $C$ に流れる電流 $I_C$ 、回路全体に流れる電流 $I$ が求められたので、続いて、LC並列回路の電圧と電流のベクトル図の描き方について解説します。
LC並列回路の電圧と電流のベクトル図
LC並列回路の電圧と電流のベクトル図も描いてみましょう。
LC並列回路の電圧と電流のベクトル図は、「コイル $L$ のリアクタンス $\omega L$ 」と「コンデンサ $C$ のリアクタンス $\dfrac{1}{\omega C}$ 」の大小関係でベクトル図が変わります。
なので、ここでは、
❶ $\omega L\gt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合
❷ $\omega L\lt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合
❸ $\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ の場合
に分けてLC並列回路の電圧と電流のベクトル図を描いていきます。
また、LC並列回路のように並列接続の回路の場合は、一般に、電圧のベクトルを基準にして描いていくとベクトル図を描きやすいです。なので、ここでも電圧のベクトルを基準にしてLC並列回路の電圧と電流のベクトル図を描いてみます。
では、❶ $\omega L\gt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合から。
❶ $\omega L\gt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合
まず、基準のベクトルになる電圧 $\dot{V}$ を描きます。( $\dot{V}$ は電源の電圧です。)
コイル $L$ に流れる電流 $\dot{I_L}$ は $\dot{I_L} =\dfrac{1}{j\omega L}\dot{V} =-j\dfrac{1}{\omega L}\dot{V}$ と表わされるので、電流 $\dot{I_L}$ のベクトルの向きは、電圧 $\dot{V}$ のベクトルを時計方向に90°回転した向きになります。
$\dot{I_L} =-j\dfrac{1}{\omega L}\dot{V}$ は、ベクトル $\dot{V}$ を $\dfrac{1}{\omega L}$ 倍して時計方向に90°回転したのがベクトル $\dot{I_L}$ になるということを表わしています。(ベクトルに「 $-j$ 」を1回かけると、ベクトルは時計方向に90°回転します。)
$\dot{I_L}$ の向きは $\dot{V}$ を時計方向に90°回転した向きになるので、電流 $\dot{I_L}$ は電圧 $\dot{V}$ より $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$](90°)位相が遅れている(言い換えれば、電圧 $\dot{V}$ は電流 $\dot{I_L}$ より $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$](90°)位相が進んでいる)ということになります。
コンデンサ $C$ に流れる電流 $\dot{I_C}$ は $\dot{I_C} =j\omega C\dot{V}$ と表わされるので、電流 $\dot{I_C}$ のベクトルの向きは、電圧 $\dot{V}$ のベクトルを反時計方向に90°回転した向きになります。
$\dot{I_C} =j\omega C\dot{V}$ は、ベクトル $\dot{V}$ を $\omega C$ 倍して反時計方向に90°回転したのがベクトル $\dot{I_C}$ になるということを表わしています。(ベクトルに「 $j$ 」を1回かけると、ベクトルは反時計方向に90°回転します。)
$\dot{I_C}$ の向きは $\dot{V}$ を反時計方向に90°回転した向きになるので、電流 $\dot{I_C}$ は電圧 $\dot{V}$ より $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$](90°)位相が進んでいる(言い換えれば、電圧 $\dot{V}$ は電流 $\dot{I_C}$ より $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$](90°)位相が遅れている)ということになります。
回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ は、コイル $L$ に流れる電流 $\dot{I_L}$ とコンデンサ $C$ に流れる電流 $\dot{I_C}$ の和(ベクトル和)$\dot{I} =\dot{I_L} +\dot{I_C}$ で表わされるので、回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ は電流 $\dot{I_L}$ と電流 $\dot{I_C}$ のベクトルを合成したベクトルになります。
ここで、電流 $\dot{I_L}$ と電流 $\dot{I_C}$ を合成した電流 $\dot{I}$ のベクトルの向きが上向きになっているのは、ここでは $\omega L\gt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合で考えているためで、$\omega L\gt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合は、
電流 $\dot{I_L}$ の大きさ( $I_L=\dfrac{V}{\omega L}$ )$\lt$ 電流 $\dot{I_C}$ の大きさ( $I_C=\omega CV$ )
となるからです。(並列接続なので電圧 $V$ はどちらも同じ大きさになり、$\omega L\gt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合は $\dfrac{1}{\omega L}\lt\omega C$ となります。)
以上より、$\omega L\gt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合のLC並列回路の電圧と電流のベクトル図は次のようになり、$\omega L\gt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合、回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ は電源の電圧 $\dot{V}$ より位相が $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$](90°)進んでいる(言い換えれば、電源の電圧 $\dot{V}$ は回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ より位相が $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$](90°)遅れている)のが分かります。
$\omega L\gt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合、電流 $\dot{I}$ は電圧 $\dot{V}$ より位相が $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$]進むので、電圧 $\dot{V}$ に対する電流 $\dot{I}$ の位相差は $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$]になります。
ちなみに、各ベクトルの大きさ(長さ)は、それぞれさきほど計算した $I_L$ 、$I_C$ 、$I$ になります。( $\dot{V}$ の大きさは $V$ です。)
❷ $\omega L\lt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合
まず、基準のベクトルになる電圧 $\dot{V}$ を描きます。
コイル $L$ に流れる電流 $\dot{I_L}$ は $\dot{I_L} =\dfrac{1}{j\omega L}\dot{V} =-j\dfrac{1}{\omega L}\dot{V}$ と表わされるので、電流 $\dot{I_L}$ のベクトルの向きは、電圧 $\dot{V}$ のベクトルを時計方向に90°回転した向きになります。
コンデンサ $C$ に流れる電流 $\dot{I_C}$ は $\dot{I_C} =j\omega C\dot{V}$ と表わされるので、電流 $\dot{I_C}$ のベクトルの向きは、電圧 $\dot{V}$ のベクトルを反時計方向に90°回転した向きになります。
回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ は、コイル $L$ に流れる電流 $\dot{I_L}$ とコンデンサ $C$ に流れる電流 $\dot{I_C}$ の和(ベクトル和)$\dot{I} =\dot{I_L} +\dot{I_C}$ で表わされるので、回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ は電流 $\dot{I_L}$ と電流 $\dot{I_C}$ のベクトルを合成したベクトルになります。
ここで、電流 $\dot{I_L}$ と電流 $\dot{I_C}$ を合成した電流 $\dot{I}$ のベクトルの向きが下向きになっているのは、ここでは $\omega L\lt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合で考えているためで、$\omega L\lt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合は、
電流 $\dot{I_L}$ の大きさ( $I_L=\dfrac{V}{\omega L}$ )$\gt$ 電流 $\dot{I_C}$ の大きさ( $I_C=\omega CV$ )
となるからです。(並列接続なので電圧 $V$ はどちらも同じ大きさになり、$\omega L\lt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合は $\dfrac{1}{\omega L}\gt\omega C$ となります。)
以上より、$\omega L\lt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合のLC並列回路の電圧と電流のベクトル図は次のようになり、$\omega L\lt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合、回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ は電源の電圧 $\dot{V}$ より位相が $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$](90°)遅れている(言い換えれば、電源の電圧 $\dot{V}$ は回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ より位相が $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$](90°)進んでいる)のが分かります。
$\omega L\lt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合、電流 $\dot{I}$ は電圧 $\dot{V}$ より位相が $\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$]遅れるので、電圧 $\dot{V}$ に対する電流 $\dot{I}$ の位相差は $-\dfrac{\pi}{2}$[$\mathrm{rad}$]になります。
❸ $\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ の場合
まず、基準のベクトルになる電圧 $\dot{V}$ を描きます。
コイル $L$ に流れる電流 $\dot{I_L}$ は $\dot{I_L} =\dfrac{1}{j\omega L}\dot{V} =-j\dfrac{1}{\omega L}\dot{V}$ と表わされるので、電流 $\dot{I_L}$ のベクトルの向きは、電圧 $\dot{V}$ のベクトルを時計方向に90°回転した向きになります。
コンデンサ $C$ に流れる電流 $\dot{I_C}$ は $\dot{I_C} =j\omega C\dot{V}$ と表わされるので、電流 $\dot{I_C}$ のベクトルの向きは、電圧 $\dot{V}$ のベクトルを反時計方向に90°回転した向きになります。
回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ は、コイル $L$ に流れる電流 $\dot{I_L}$ とコンデンサ $C$ に流れる電流 $\dot{I_C}$ の和(ベクトル和)$\dot{I} =\dot{I_L} +\dot{I_C}$ で表わされるので、回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ は電流 $\dot{I_L}$ と電流 $\dot{I_C}$ のベクトルを合成したベクトルになります。
ここで、回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ のベクトルがゼロになっているのは、ここでは $\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ の場合で考えているためで、$\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ の場合は、
電流 $\dot{I_L}$ の大きさ( $I_L=\dfrac{V}{\omega L} =\omega CV$ )$=$ 電流 $\dot{I_C}$ の大きさ( $I_C=\omega CV=\dfrac{V}{\omega L}$ )
となり、電流 $\dot{I_L}$ と電流 $\dot{I_C}$ のベクトルの向きは180°反対で同じ大きさになるからです。(つまり、電流 $\dot{I_L}$ と電流 $\dot{I_C}$ は完全に打ち消しあうから。)
以上より、$\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ の場合のLC並列回路の電圧と電流のベクトル図は次のようになり、$\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ の場合、回路全体に流れる電流 $\dot{I}$ はゼロになります。
$\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ となる場合、LC並列回路は共振(並列共振)します。並列共振については、こちらのRLC並列共振回路のページで詳しく解説していますので参考にしてみてください。
以上で、LC並列回路の電圧と電流のベクトル図が求められました。LC並列回路の場合はリアクタンスの大きさで場合分けをしないとならないので、ちょっとめんどくさいですね。
- コイル $L$ に流れる電流 $I_L$
$I_L=\dfrac{V}{\omega L}$
- コンデンサ $C$ に流れる電流 $I_C$
$I_C=\omega CV$
- LC並列回路全体に流れる電流 $I$
$I=V\left|\omega C-\dfrac{1}{\omega L}\right|$
- LC並列回路の電圧と電流のベクトル図
❶ $\omega L\gt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合
❷ $\omega L\lt\dfrac{1}{\omega C}$ の場合
❸ $\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ の場合
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- RL直列回路の回路に流れる電流と各素子にかかる電圧を電源の電圧を基準にして計算していますので、RL直列回路の電圧と電流の計算方法の参考にしてみてください。
- RC直列回路の電圧と電流の計算(電源の電圧を基準にした場合)
- RC直列回路の回路に流れる電流と各素子にかかる電圧を電源の電圧を基準にして計算していますので、RC直列回路の電圧と電流の計算方法の参考にしてみてください。
- RLC直列回路の電圧と電流の計算(電源の電圧を基準にした場合)
- RLC直列回路の回路に流れる電流と各素子にかかる電圧を電源の電圧を基準にして計算していますので、RLC直列回路の電圧と電流の計算方法の参考にしてみてください。
- 交流回路の電力の計算(抵抗だけの回路)
- 負荷が抵抗だけの場合の交流回路の電力(瞬時電力、平均電力)の計算方法(求め方)、電力の波形などについて解説しています。
- 交流回路の電力の計算(コイルだけの回路)
- 負荷がコイルだけの場合の交流回路の電力(瞬時電力、平均電力)の計算方法(求め方)、電力の波形などについて解説しています。
- 交流回路の電力の計算(コンデンサだけの回路)
- 負荷がコンデンサだけの場合の交流回路の電力(瞬時電力、平均電力)の計算方法(求め方)、電力の波形などについて解説しています。
- 交流回路の電力の計算(RL直列回路)
- RL直列回路の電力(瞬時電力、平均電力)の計算方法(求め方)、電力の波形などについて解説しています。
- 交流回路の電力の計算(RC直列回路)
- RC直列回路の電力(瞬時電力、平均電力)の計算方法(求め方)、電力の波形などについて解説しています。
- 有効・無効・皮相電力
- 交流回路には「有効電力」「無効電力」「皮相電力」の3種類の電力があります。それぞれの電力の求め方と、3つの電力の関係について解説しています。
- 力率とは?(力率と電力の関係)
- 交流回路の勉強をしていると「力率」がでてきますが、力率って何でしょうか?力率の式の表し方には色々ありますが、ここでは、力率と皮相電力、有効電力、無効電力の関係とその関係式などについて解説します。
- 力率とは?(力率と位相の関係)
- 交流回路の勉強をしていると「力率(cosΘ)」がでてきますが、力率って何でしょうか?力率の式の表し方には色々ありますが、ここでは、位相と力率の関係について抵抗、コイル、コンデンサの回路を例に解説しています。
- 波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の求め方
- 波形は色々ありますが、その波形の特性を表わす値として実効値、平均値、最大値、波形率、波高率などがあります。ここでは、波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の定義式、求め方について解説しています。
- 正弦波波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法
- 波形は色々ありますが、その波形の特性を表わす値として実効値、平均値、最大値、波形率、波高率などがあります。ここでは、正弦波波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法、求め方について解説しています。
- 全波整流波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法
- 波形は色々ありますが、その波形の特性を表わす値として実効値、平均値、最大値、波形率、波高率などがあります。ここでは、全波整流波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法、求め方について解説しています。
- 半波整流波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法
- 半波整流波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法、求め方について解説しています。波形の特性を表わす値として実効値、平均値、最大値、波形率、波高率などがありますが、これらは大事な値ですので、求め方、計算方法をおぼえておきましょう。
- 方形波波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法
- 方形波波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法、求め方について解説しています。方形波波形の場合、実効値と平均値と最大値が同じ値、波形率と波高率が同じ値になります。ちなみに、方形波と矩形波は同じです。
- のこぎり波波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法
- のこぎり波波形の実効値、平均値、最大値、波形率、波高率の計算方法、求め方について解説しています。のこぎり波波形の実効値と平均値を求めるためには、のこぎり波波形の式から考えないといけないので、他の波形よりも計算がちょっと大変です。
- 三相電力の公式はなぜ√3倍なのか?(三相電力の公式の導出)
- 三相電力の公式はP=√3VIcosφで表わされますが、なぜ√3倍になるのか?スター結線の場合とデルタ結線の場合それぞれについて、三相電力の公式を導出してみました。この三相電力の公式は電験三種の「理論」「電力」科目の問題を解くときに度々使われる基本的な公式ですのでおぼえておくようにしましょう。
- スター結線(Y結線)の線間電圧はなぜ相電圧の√3倍になるのか?
- スター結線(Y結線)されている三相交流回路の線間電圧は相電圧の√3倍になりますが、なぜ√3倍になるのか?スター結線のときの線間電圧と相電圧のベクトル図を求め、求めたベクトル図から√3倍になる理由について解説しています。
- デルタスター変換(Δ→Y変換)
- デルタスター変換(Δ→Y変換)について解説しています。デルタ結線(Δ結線)を等価なスター結線(Y結線)に変換するのをデルタスター変換(Δ→Y変換)といいます。デルタスター変換の式の導出方法についても解説していますので参考にしてみてください。
- スターデルタ変換(Y→Δ変換)
- スターデルタ変換(Y→Δ変換)について解説しています。スター結線(Y結線)を等価なデルタ結線(Δ結線)に変換するのをスターデルタ変換(Y→Δ変換)といいます。スターデルタ変換の式の導出方法についても解説していますので参考にしてみてください。
- 交流回路のテブナンの定理
- 交流回路のテブナンの定理(鳳-テブナンの定理)について解説しています。テブナンの定理を使った交流回路の計算方法や、交流回路のテブナンの定理の証明についても解説していますので参考にしてみてください。