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有効電力・無効電力・皮相電力(交流回路の3つの電力)
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交流回路の電力には有効電力、無効電力、皮相電力の3種類の電力があります。
直流回路で電力を求めるときには電圧と電流をそのままかけるだけですが、交流回路の場合には電力が3種類もあるので、どの電力を求めるかで求める式も違います。(って、ものが違えば求める式も違うよね。)
ここでは、有効電力、無効電力、皮相電力それぞれについて説明して、ついでに、3つの電力の関係についても説明します。
では、有効電力から・・・
有効電力
有効電力は負荷が消費する電力です。
そりゃ、電力なんだから負荷によって消費されるでしょ! と思うかもしれませんが(え、思わない?)、負荷が消費しない電力もあるんです。それは、無、無、無効・・・(これは後で)
次のような単相交流回路を考えてみます。
この回路は、交流電源に力率 $\cos \theta$ の負荷が接続されている回路です。負荷に交流電圧がかかるので、負荷にはもちろん交流電流が流れます。
負荷にかかる電圧を $V$[$\mathrm{V}$]、流れる電流を $I$[$\mathrm{A}$]とすると、有効電力 $P$[$\mathrm{W}$]は次の式で表わされます。
$P=V\times I\times \cos\theta$ [$\mathrm{W}$] …①
交流回路なので、有効電力の式には力率 $\cos\theta$ をかけてあげないとだめなのね。で、単位は「$\mathrm{W}$(ワット)」です。
有効電力は負荷が消費する電力なので、負荷はこの $V\times I\times \cos\theta$[$\mathrm{W}$]の電力を電源からもらって消費し続けていることになります。
それから、有効電力は負荷が消費する電力なので「消費電力」ともいいます。
あれですね、電気機器にナントカワット(○○○W)って書かれていますよね? 例えば、蛍光灯に40Wとか。単位が「W」で書かれている電力は消費電力(=有効電力)を表わしていて、40Wの蛍光灯の場合、その蛍光灯を使うと40Wの電力を消費しますよってことです。
無効電力
無効電力は電源と負荷を行ったり来たりしているだけの電力で、負荷が消費しない電力です。
ね、無効電力は電力なのに負荷で消費されないんです。イメージとしてはこんな感じ。
で、無効電力 $Q$[$\mathrm{var}$]は次の式で表わされます。
$Q=V\times I\times \sin\theta$ [$\mathrm{var}$] …②
有効電力を求めるときは力率 $\cos\theta$ をかけますが、無効電力を求めるときは $\sin\theta$ をかけます。この $\sin\theta$ を「無効率」といいます。無効電力の単位は「$\mathrm{var}$」と書いてバールと読みます。
無効電力は負荷によって消費されない電力なので必要のない電力のように思えますが、電気機器(負荷)を動かすためにはその電気機器(負荷)に必要な分の無効電力を供給しなければなりません。
なので、無効電力は必要ないようで必要な電力なんです。
あ、それから、無効電力には「進みの無効電力」と「遅れの無効電力」があります。
例えば、抵抗とコイルを直列接続したような負荷(誘導性負荷)の場合には「遅れの無効電力(を消費)」、抵抗とコンデンサを直列接続したような負荷(容量性負荷)の場合には「進みの無効電力(を消費)」になります。(「を消費」って書いてますが、負荷は無効電力の消費と発生を繰り返していて、その平均はゼロになるので電源からの電力を消費しません。なのです。)
皮相電力
皮相電力は電源から送り出される電力で、「見かけの電力」とも呼ばれます。
電源から送り出される・・・
交流の電力には「有効電力」と「無効電力」と「皮相電力」の3つの電力があるのでした。それで、有効電力と無効電力はどちらも電源から供給して(送り出して)いますよね?
ということは、皮相電力は有効電力と無効電力を合わせた電力ってことになります。
合わせた電力といっても、ただ単に2つの電力を普通に足し算するのではありません。有効電力と無効電力をベクトルで足し算(合成)した電力です。
で、皮相電力 $S$[$\mathrm{V} \,\cdotp \mathrm{A}$]を式で表わすと次のようになります。
$S=V\times I$ [$\mathrm{V} \,\cdotp \mathrm{A}$] …③
電圧 $V$ と電流 $I$ をかけただけの式になっちゃいます。皮相電力の単位は「$\mathrm{V} \,\cdotp \mathrm{A}$」と書いてボルトアンペアと読みます。ボルトアンペアをブイエーという人もいます。
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有効電力・無効電力・皮相電力の関係
有効電力、無効電力、皮相電力について、それぞれなんとなく分かったと思うので(たぶん)、次は3つの電力の関係です。
3つの電力の式(①、②、③式)を並べてみると、何かが見えてきます! では、並べてみましょう。
有効電力の式: $P=$ $V\times I$ $\times\cos\theta$ [$\mathrm{W}$] …①
無効電力の式: $Q=$ $V\times I$ $\times\sin\theta$ [$\mathrm{var}$] …②
皮相電力の式: $S=$ $V\times I$ [$\mathrm{V}\,\cdotp\mathrm{A}$] …③
う〜ん、①〜③のどの式にも $V\times I$ が入っています・・・
①〜③のどの式にも $V\times I$ があるので、この $V\times I$ のベクトルを適当に書いてみます。($V\times I$ は③式より皮相電力ですよ。)
次に、①式の有効電力は $V\times I$ に $\cos\theta$ をかけたものなので、$\theta$ を下図のように決めると、有効電力は次のようなベクトルになるんじゃないかな?と、たぶん思います。
同じように、②式の無効電力は $V\times I$ に $\sin\theta$ をかけたものなので、無効電力はこれまた次のようなベクトルになるんじゃないかな?と、思います。
で、エィっとちょっとだけ時計回りに回転します。
すると、直角三角形になっています!
この直角三角形が有効電力、無効電力、皮相電力の関係を表わしていて、
- 有効電力(のベクトル)と無効電力(のベクトル)はお互いに直角の関係
- 有効電力と無効電力をベクトルで足し合わせれば(合成すれば)皮相電力
になります。
皮相電力は電源から送り出される電力なので、上の図を見ると分かるように、無効電力が大きくなるとその分電源から送り出す電力が大きくなってしまいます。つまり、無効電力が大きいと電源の負担が大きくなってしまうので、ちょっとよろしくないことになります。
それから、直角三角形になっているので、三平方の定理を使うと3つの電力の関係は次の式でも表わすことができます。
$S^2=P^2+Q^2$ つまり、皮相電力2=有効電力2+無効電力2
で、皮相電力 $=\sqrt{\text{有効電力}^2+\text{無効電力}^2}$
三平方の定理については、こちらの三平方の定理(ピタゴラスの定理)のページを参考にしてみてください。
有効電力・無効電力・皮相電力のまとめ
有効電力・無効電力・皮相電力についてまとめると次のようになります。
- 有効電力は負荷が消費する電力
- 無効電力は負荷が消費しない電力(負荷によって消費されない電力)
- 皮相電力は電源が送り出す電力(有効電力と無効電力をベクトルで足したもの)
- 有効電力・無効電力・皮相電力の関係は直角三角形になる
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