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三相電力の公式はなぜ√3倍なのか?(三相電力の公式の導出)
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三相電力の公式
三相電力の公式は、次の①式で表わされますよね?
$P_{3l}=\sqrt{3}V_lI_l\cos\theta$ …①
( $P_{3l}$:三相電力、$V_l$:線間電圧、$I_l$:線電流、$\cos\theta$:力率 )
それで、この①式は三相電力の問題を解くときなどによく使っていると思いますが、①式を見ると右辺は $\sqrt{3}$ 倍されています。
この $\sqrt{3}$ を見て、
なんで $\sqrt{3}$ なの?
と、思ったりしたことないですか? えっ? ない?
思ったことがある人もいると思うので、ここでは三相電力の公式を導出してみようと思います。
ちなみに、①式はスター結線(Y結線)でもデルタ結線(Δ結線)でも、どちらでも使える公式です。
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三相電力の公式の導出(なんで√3?)
三相電力の公式(①式)の電圧と電流はそれぞれ、電圧=線間電圧、電流=線電流で与えられています。ここが $\sqrt{3}$ になるポイントになるので、頭のすみっこでおぼえておきましょう。
それでは、三相電力の公式の導出です。
まず、単相電力について考えてみます。単相電力の式は次の②式になります。
$P_1=VI\cos\theta$ …②
( $P_1$:単相電力、$V$:電圧、$I$:電流、$\cos\theta$:力率 )
三相電力は単相電力3つ分の電力になるので、つまり、
三相電力 $=3 \ \times$ 単相電力
となります。これを式で書いてみると、次の③式になります。
$P_{3p}=3 \ \times$(1相分の電力)$=3\times V_pI_p\cos\theta$ …③
( $P_{3p}$:三相電力、$V_p$:相電圧、$I_p$:相電流、$\cos\theta$:力率 )
ここで③式の電圧と電流はそれぞれ、電圧=相電圧、電流=相電流で与えられていることに注意しましょう!
それで、この③式ももちろん三相電力の式なんですが、よく使っている三相電力の公式とはちょっと違いますよね? 並べてもう一度書いてみますよ。
$P_{3l}=\sqrt{3} V_lI_l\cos\theta$ …① (←よく使う三相電力の公式)
$P_{3p}=3V_pI_p\cos\theta$ …③ (←単相電力3つ分で表わした三相電力の式)
見比べてみると、①式の電圧と電流はそれぞれ電圧=線間電圧、電流=線電流、③式の電圧と電流はそれぞれ電圧=相電圧、電流=相電流になっていますね。
ということは、③式の電圧、電流をそれぞれ電圧=線間電圧、電流=線電流で表わせば、①式になるかも?
なんて、思いませんか?
それでは、③式を線間電圧と線電流で表わしてみることにしましょう。
っと、その前に、三相の結線にはスター結線(Y結線)とデルタ結線(Δ結線)があるので、それぞれ分けて計算します。まずはスター結線(Y結線)から。
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スター結線(Y結線)
電源側、負荷側ともにスター結線(Y結線)としたときの回路図は、次のようになります。
それで、図にも書いていますが、スター結線(Y結線)の場合の相電圧、線間電圧、相電流、線電流の関係は、
相電圧 $=\dfrac{\text{線間電圧}}{\sqrt{3}}$ 、つまり、$V_p=\dfrac{V_l}{\sqrt{3}}$ …④
相電流 $=$ 線電流 、つまり、$I_p=I_l$ …⑤
と、なりますよね。
なので、この④、⑤を③式に代入すると、スター結線(Y結線)のときの三相電力を線間電圧、線電流で表わすことができます。
では、代入してみましょう。
$P_{3p}=3\times V_p\times I_p\cos\theta$ $=3\times\dfrac{V_l}{\sqrt{3}}\times I_l\cos\theta$ $=\dfrac{3}{\sqrt{3}} V_lI_l\cos\theta$
$=\dfrac{3\sqrt{3}}{\sqrt{3}\times\sqrt{3}} V_lI_l\cos\theta$ $=\dfrac{3\sqrt{3}}{3} V_lI_l\cos\theta$ $=\sqrt{3} V_lI_l\cos\theta$
$\therefore P_{3p}=\sqrt{3} V_lI_l\cos\theta =P_{3l}$ …⑥
ほ〜らね、三相電力の公式($\sqrt{3}$ をかける公式)になっちゃいました。
続いて、デルタ結線(Δ結線)のときはどうなるか計算してみます。
デルタ結線
電源側、負荷側ともにデルタ結線(Δ結線)としたときの回路図は、次のようになります。
デルタ結線(Δ結線)の場合の相電圧、線間電圧、相電流、線電流の関係は、
相電圧 $=$ 線間電圧 、つまり、$V_p=V_l$ …⑦
相電流 $=\dfrac{\text{線電流}}{\sqrt{3}}$ 、つまり、$I_p=\dfrac{I_l}{\sqrt{3}}$ …⑧
と、なりますよね。
なので、⑦、⑧を③式に代入すると、デルタ結線(Δ結線)のときの三相電力を線間電圧、線電流で表わすことができます。
では、代入してみましょう。
$P_{3p}=3\times V_p\times I_p\cos\theta$ $=3\times V_l\times\dfrac{I_l}{\sqrt{3}}\cos\theta$ $=\dfrac{3}{\sqrt{3}} V_lI_l\cos\theta$
$=\dfrac{3\sqrt{3}}{\sqrt{3}\times\sqrt{3}} V_lI_l\cos\theta$ $=\dfrac{3\sqrt{3}}{3} V_lI_l\cos\theta$ $=\sqrt{3} V_lI_l\cos\theta$
$\therefore P_{3p}=\sqrt{3} V_lI_l\cos\theta =P_{3l}$ …⑨
デルタ結線(Δ結線)のときもスター結線(Y結線)のときと同じように、三相電力の公式($\sqrt{3}$ をかける公式)になっちゃいました。
したがって、⑥、⑨式より、スター結線(Y結線)でもデルタ結線(Δ結線)でも、三相電力を線間電圧と線電流で表わすと三相電力の公式(①式)になって、①式の $\sqrt{3}$ というのは相電圧と線間電圧、相電流と線電流の関係から導かれるものだったんですね。
三相電力の公式は、電験三種の「理論」「電力」科目の問題でよく使われる基本的な公式なので、受験する方はおぼえておくようにしましょう。
特に、線間電圧だったかな?相電圧だったかな?なんて、アレレになってしまう人は多いですよ。
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