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電源から供給できる最大電力(最大有能電力)

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内部抵抗をもつ電源に抵抗負荷を接続し、電源から抵抗負荷に電力を供給するとき、電源から抵抗負荷に供給できる電力には上限があります。

 

つまり、内部抵抗をもつ電源は負荷にいくらでも電力を供給できるわけではなく、電源が負荷に供給できる電力には限界があるということです。

 

電源が負荷に供給できる電力には上限(限界)がある

 

例えば次の図のように、内部抵抗が $r$[$\Omega$]で起電力が $E$[$\mathrm{V}$]の電圧源(電源)から、$R$[$\Omega$]の抵抗負荷に電力を供給するとします。

 

内部抵抗がrで起電力がEの電圧源から抵抗負荷Rに電源を供給する回路

 

このとき、電圧源から抵抗負荷に供給できる電力は、負荷抵抗 $R$ が電圧源の内部抵抗 $r$ と等しいときに最大になり、その最大値 $P_{max}$[$\mathrm{W}$]は、

 

$\therefore P_{max}=\dfrac{E^2}{4\, r}$ (電圧源から供給できる最大電力

 

になります。この $P_{max}$ が電圧源から抵抗負荷に供給できる電力の最大値になるので、これよりも大きな電力を電圧源から取り出すことはできません、なのです。

 

ちなみに、この電力の最大値 $P_{max}$ を電圧源の最大電力または最大有能電力といいます。

 

電圧源の最大電力(最大有能電力)

 

このように、電源から抵抗負荷に供給できる電力に限界があるのは電源に内部抵抗があるためで、例えば内部抵抗がない定電圧源(内部抵抗 $0\,\Omega$ の電圧源)の場合は、いくらでも電力を取り出せます。(定電圧源の場合は取り出せる最大電力が無限大!)

 

定電圧源から取り出せる最大電力は無限大

 

定電圧源は常に一定の電圧を出力するので、負荷によっていくらでも電力を取り出せます。定電圧源については、こちらの定電圧源のページを参考にしてみてください。

 

ですが、例えば電池のように実際の電源には内部抵抗があるので、電源から抵抗負荷に供給できる電力には限界があるよ、ということですね。

 

電池の内部抵抗については、こちらの電池の内部抵抗と端子電圧のページを参考にしてみてください。

 

では続いて、

  • なぜ負荷抵抗 $R$ が電源の内部抵抗 $r$ と等しいときに電力が最大になるのか?
  • なぜ電圧源の最大電力は $P_{max}=\dfrac{E^2}{4\, r}$ になるのか?

について、回路図から計算して導出してみます。

 

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電源からの供給電力が最大になる条件と最大電力の導出

次の図のように、内部抵抗が $r$[$\Omega$]で起電力が $E$[$\mathrm{V}$]の電圧源から $R$[$\Omega$]の抵抗負荷に電力を供給する回路があるとして、抵抗負荷にかかる電圧を $V$[$\mathrm{V}$]、抵抗負荷に流れる電流を $I$[$\mathrm{A}$]とします。

 

内部抵抗がrで起電力がEの電圧源から抵抗負荷Rに電力を供給する回路

 

この回路において、抵抗負荷に供給される電力 $P$[$\mathrm{W}$]は、

 

$P=V\, I=I^2R$

 

$\therefore P=I^2R$ …①

 

となります。また、抵抗負荷に流れる電流 $I$ は、回路全体の合成抵抗が $r+R$ なので、

 

$I=\dfrac{E}{r+R}$ …②

 

となります。②を①式に代入すると、

 

$P=I^2R=\left(\dfrac{E}{r+R}\right)^2 R$

 

$=\dfrac{E^2R}{\left( r+R\right)^2}$

 

$=\dfrac{E^2R}{r^2+2\, r\, R+R^2}$

 

$=\dfrac{E^2}{\dfrac{r^2}{R} +2\, r+R}$ (分母と分子を $R$ で割った

 

$\therefore P=\dfrac{E^2}{\dfrac{r^2}{R} +R+2\, r}$ …③

 

となります。③式をみてみると③式の分子は定数なので、③式の分母が最小のとき電力 $P$ は最大になります。

 

ここで③式の分母に着目すると、③式の分母の第1項と第2項をかけたものは定数になるので $\left(\because\dfrac{r^2}{R}\times R=r^2\right)$、最小の定理より $\dfrac{r^2}{R} =R$ …④ のとき③式の分母が最小になります。

 

最小の定理については、こちらの最小の定理のページを参考にしてみてください。

 

④式より、$r^2=R^2$ $\therefore R=r$ なので、つまり、抵抗負荷 $R$ と内部抵抗 $r$ が等しいときに分母が最小となり、電力 $P$ が最大になります。すなわち、電圧源からの供給電力が最大になる条件は、

 

$\therefore R=r$ …⑤ (電圧源からの供給電力が最大になる条件

 

になります。

 

電圧源からの供給電力が最大になる条件( $R=r$ )が求められたので、あとはこの条件を使って電力を求めるとそれが最大電力 $P_{max}$ になります。⑤を③式に代入すると、

 

$P=\dfrac{E^2}{\dfrac{r^2}{R} +R+2\, r}$

 

$=\dfrac{E^2}{\dfrac{r^2}{r} +r+2\, r}$ ($R$ に $r$ を代入した

 

$=\dfrac{E^2}{r+r+2\, r}$

 

$=\dfrac{E^2}{4\, r}$

 

$\therefore P_{max}=\dfrac{E^2}{4\, r}$ (電圧源から供給できる最大電力

 

となり、電圧源から供給できる最大電力(最大有能電力)$P_{max}$ が求められました。

 

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抵抗負荷を変化させたときの電力のグラフ

式だけだと最大電力のイメージがしにくいと思うので、抵抗負荷を変化させたときの電力のグラフ(抵抗負荷 $R$ を変数とした③式のグラフ)をエクセルで描いてみました。

 

抵抗負荷を変化させるときの回路図

 

各値については、電圧源の起電力 $E$ を $10\,\mathrm{V}$、電圧源の内部抵抗 $r$ を $0.5\,\Omega$、抵抗負荷 $R$ を $0.05\,\Omega$ 〜 $2.5\,\Omega$ としています。

 

抵抗負荷を変化させたときの電力のグラフ

 

このグラフをみてみると、抵抗負荷 $R=0.5\,\Omega$ のところで電力は最大の $P_{max}=50\,\mathrm{W}$ になっています。

 

なのでグラフからも、電力が最大になるのは抵抗負荷 $R$ が内部抵抗 $r$ と等しいときで、そのときの最大電力 $P_{max}$ は、

 

$P_{max}=\dfrac{E^2}{4\, r} =\dfrac{10^2}{4\times 0.5} =\dfrac{100}{2}$ $=50\,\mathrm{W}$

 

となることが分かります。(③式をグラフに描いただけなのでそうなるんですが…。)

 

抵抗負荷と内部抵抗が等しいとき電力は最大になる

 

ちなみに、抵抗負荷の大きさ $R$ を電圧源の内部抵抗 $r$ と等しくなるように調整することを整合をとるといいます。

 

 

電源から供給できる最大電力(最大有能電力)の解説は以上になりますが、「抵抗負荷 $R$ と内部抵抗 $r$ が等しいとき抵抗負荷 $R$ への供給電力は最大になる」というのは大事なことなのでおぼえておきましょう。

 

電源から供給できる最大電力(最大有能電力)のまとめ
  • 抵抗負荷 $R$ と電源の内部抵抗 $r$ が等しいとき負荷に供給される電力は最大になる
  • 電圧源から供給できる電力の最大値を電圧源の最大電力または最大有能電力という

 

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