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ノートンの定理
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ノートンの定理(ノルトンの定理)は等価電流源の定理とも呼ばれ、電源を含む回路において、ある特定の素子にかかる電圧を求めたいときに有用な定理です。
例えば、次のような電源を含む回路があって、この回路の端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間に接続されている抵抗 $R$[$\Omega$] にかかる電圧 $V$[$\mathrm{V}$]を求めたいとします。
このとき、抵抗 $R$ を取り外して端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間を開放状態にしたときの端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の合成コンダクタンスを $G_0$[$\mathrm{S}$]、
端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の合成コンダクタンス $G_0$ を求めるときは、電圧源は短絡、電流源は開放します。
端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間を短絡したときの端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間に流れる電流(短絡電流)を $I_0$[$\mathrm{A}$]とすると、
端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ より左側の回路は、電流が $I_0$ で内部コンダクタンスが $G_0$ の電流源に置き換える(等価変換する)ことができ、
この置き換えた電流源を、ノートンの等価電流源とか、ノートンの等価回路といいます。
抵抗 $R$ にかかる電圧 $V$ は、抵抗 $R$ のコンダクタンスを $G$[$\mathrm{S}$]とすると、次の式で求めることができます。
$V=\dfrac{I_0}{G_0+G}$ …① (ノートンの定理の式)
これがノートンの定理で、ノートンの定理を使うと、電圧を求めたいところの特定の素子を除いた部分の回路(この場合、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ より左側の回路)を内部コンダクタンスがある1つの電流源で等価的に置き換えることができるので、複雑な回路であっても回路を単純化して電圧の計算をできるようになります。
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ノートンの定理による電圧の求め方を整理すると、次のような手順(STEP1〜STEP5)になります。
以上のような手順で、抵抗 $R$ にかかる電圧 $V$ を求めることができます。
では続いて、ノートンの定理の問題でよくある簡単な回路を例にして、抵抗にかかる電圧を求めてみましょう。
このページではノートンの定理を直流回路(電源は直流電源、素子は抵抗のみ)で解説していますが、ノートンの定理は交流回路でも成り立つ定理です。
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ノートンの定理による電圧の計算
ここでは、
- 電源が1つ、抵抗が3つある回路
- 電源が2つ、抵抗が3つある回路
の2つの回路について、ノートンの定理を用いて抵抗にかかる電圧を求めてみます。
電源が1つ、抵抗が3つある回路
ノートンの定理を用いて、次の回路の抵抗 $R_3$ にかかる電圧 $V_3$ を先ほどのSTEP1〜5の手順に従って求めてみます。
抵抗 $R_3$ にかかる電圧を求めたいので、抵抗 $R_3$ の両端を端子「$\mathrm{a}$」「$\mathrm{b}$」とします。
抵抗 $R_3$ を取り外して、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間を開放状態にします。
電圧源は短絡し、電流源は開放して回路内のすべての電源を取り除くと、回路は次のようになります。
この回路の電源は電圧源だけなので、電圧源を短絡します。
電源を取り除くと抵抗 $R_1$ と抵抗 $R_2$ が並列に接続された回路になっているので、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ からみた回路の合成コンダクタンス $G_0$ は、
$G_0=\dfrac{1}{R_1} +\dfrac{1}{R_2} =\dfrac{R_2+R_1}{R_1R_2}$
$\therefore G_0=\dfrac{R_1+R_2}{R_1R_2}$ (合成コンダクタンス $G_0$ )
となります。
抵抗の逆数がコンダクタンスになるので、抵抗 $R_1$ のコンダクタンスは $\dfrac{1}{R_1}$ 、抵抗 $R_2$ のコンダクタンスは $\dfrac{1}{R_2}$ になります。並列接続の合成コンダクタンスは、コンダクタンスをただ単に足すだけで求められるので、抵抗 $R_1$ と抵抗 $R_2$ の合成コンダクタンス $G_0$ は、$G_0=\dfrac{1}{R_1} +\dfrac{1}{R_2}$ となります。
端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間を短絡したときの回路は次のような回路になり、
この回路の抵抗 $R_1$ を通った電流は、抵抗 $R_2$ には流れず、すべて端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の方に流れます。
なので、短絡した端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間に流れる電流(短絡電流)$I_0$ はオームの法則より、
$\therefore I_0=\dfrac{V}{R_1}$ (短絡電流 $I_0$ )
となります。
STEP3で求めた合成コンダクタンス $G_0$ とSTEP4で求めた短絡電流 $I_0$ は、
$G_0=\dfrac{R_1+R_2}{R_1R_2}$
$I_0=\dfrac{V}{R_1}$
で、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の抵抗 $R_3$ のコンダクタンス $G_3$ は $G_3=\dfrac{1}{R_3}$ なので、これらをノートンの定理の式(①式)に代入すると、
$V_3=\dfrac{I_0}{G_0+G_3} =\dfrac{\dfrac{V}{R_1}}{\dfrac{R_1+R_2}{R_1R_2} +\dfrac{1}{R_3}}$
$=\dfrac{\dfrac{V}{R_1}}{\dfrac{\left( R_1+R_2\right) R_3+R_1R_2}{R_1R_2R_3}}$
$=\dfrac{R_2R_3V}{\left( R_1+R_2\right) R_3+R_1R_2}$ (分母と分子に $R_1R_2R_3$ をかけた)
$=\dfrac{R_2R_3V}{R_1R_3+R_2R_3+R_1R_2}$
$\therefore V_3=\dfrac{R_2R_3V}{R_1R_2+R_2R_3+R_3R_1}$ (抵抗 $R_3$ にかかる電圧 $V_3$ )
となり、この電圧 $V_3$ が抵抗 $R_3$ にかかる電圧になります。
以上で、「電源が1つ、抵抗が3つある回路」の抵抗 $R_3$ にかかる電圧 $V_3$ が求められました。
この回路は複雑な回路ではないので、そんなに難しくはないですね。
次は、電源が2つある回路の計算です。電源が2つあるのでちょっとだけ難しくなりますよ、ちょっとだけ。
電源が2つ、抵抗が3つある回路
ノートンの定理を用いて、次の回路の抵抗 $R_3$ にかかる電圧 $V_3$ を求めてみます。
抵抗 $R_3$ にかかる電圧を求めたいので、抵抗 $R_3$ の両端を端子「$\mathrm{a}$」「$\mathrm{b}$」とします。
抵抗 $R_3$ を取り外して、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間を開放状態にします。
電圧源は短絡し、電流源は開放して回路内のすべての電源を取り除くと、回路は次のようになります。
この回路の電源は電圧源だけなので、電圧源を短絡します。
電源を取り除くと抵抗 $R_1$ と抵抗 $R_2$ が並列に接続された回路になっているので、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ からみた回路の合成コンダクタンス $G_0$ は、
$G_0=\dfrac{1}{R_1} +\dfrac{1}{R_2} =\dfrac{R_2+R_1}{R_1R_2}$
$\therefore G_0=\dfrac{R_1+R_2}{R_1R_2}$ (合成コンダクタンス $G_0$ )
となります。
端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間を短絡したときの回路は次のようになり、
この回路の端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間に流れる電流(短絡電流)$I_0$ は、重ね合わせの理を使うと次のように求められます。
$I_0={I_0}^\prime +{I_0}^{\prime\prime}$
$=\dfrac{V_1}{R_1} +\dfrac{V_2}{R_2} =\dfrac{R_2V_1+R_1V_2}{R_1R_2}$
$\therefore I_0=\dfrac{R_2V_1+R_1V_2}{R_1R_2}$ (短絡電流 $I_0$ )
STEP3で求めた合成コンダクタンス $G_0$ とSTEP4で求めた短絡電流 $I_0$ は、
$G_0=\dfrac{R_1+R_2}{R_1R_2}$
$I_0=\dfrac{R_2V_1+R_1V_2}{R_1R_2}$
で、端子 $\mathrm{a}$-$\mathrm{b}$ 間の抵抗 $R_3$ のコンダクタンス $G_3$ は $G_3=\dfrac{1}{R_3}$ なので、これらをノートンの定理の式(①式)に代入すると、
$V_3=\dfrac{I_0}{G_0+G_3} =\dfrac{\dfrac{R_2V_1+R_1V_2}{R_1R_2}}{\dfrac{R_1+R_2}{R_1R_2} +\dfrac{1}{R_3}}$
$=\dfrac{\dfrac{R_2V_1+R_1V_2}{R_1R_2}}{\dfrac{\left( R_1+R_2\right) R_3+R_1R_2}{R_1R_2R_3}}$
$=\dfrac{\left( R_2V_1+R_1V_2\right) R_3}{\left( R_1+R_2\right) R_3+R_1R_2}$ (分母と分子に $R_1R_2R_3$ をかけた)
$=\dfrac{R_2R_3V_1+R_1R_3V_2}{R_1R_3+R_2R_3+R_1R_2}$
$\therefore V_3=\dfrac{R_2R_3V_1+R_1R_3V_2}{R_1R_2+R_2R_3+R_3R_1}$ (抵抗 $R_3$ にかかる電圧 $V_3$ )
となり、この電圧 $V_3$ が抵抗 $R_3$ にかかる電圧になります。
以上で、「電源が2つ、抵抗が3つある回路」の抵抗 $R_3$ にかかる電圧 $V_3$ が求められました。
ノートンの定理はおぼえておくとなにかと役に立つ定理ですので、ノートンの定理の使い方はおぼえておくようにしましょう!
- ノートンの定理は、電源を含む回路において、ある特定の素子にかかる電圧を求めたいときに有用な定理
- 端子間を開放したときの合成コンダクタンス $G_0$(電圧源は短絡し、電流源は開放する)と端子間を短絡したときの短絡電流 $I_0$ が分かれば、$V=\dfrac{I_0}{G_0+G}$ で抵抗 $R$ にかかる電圧 $V$ を求められる
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ノートンの定理は回路を「電流源」に置き換える定理ですが、電流源ではなく「電圧源」に置き換える定理をテブナンの定理といいます。テブナンの定理については、こちらのテブナンの定理のページを参考にしてみてください。
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