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ラプラス変換によるRL直列回路の過渡現象の解き方

次の図のように、抵抗 $R$[$\Omega$]、コイル $L$[$\mathrm{H}$]、直流電源 $E$[$\mathrm{V}$]、スイッチ $\mathrm{S}$ からなるRL直列回路があるとします。

 

RL直列回路

 

この回路のスイッチをONすると過渡現象が起こるため、スイッチをONすると回路に流れる電流は時間的に変化し、その後ある程度時間が経過すると一定値に落ち着きます。

 

このような時間的に変化する過渡現象の電圧や電流の求め方には、回路の回路方程式(微分方程式)をたててその微分方程式をそのまま直接解いていく方法(変数分離法などを使って解いていく方法)の他に、ラプラス変換を使って解いていく方法があります。

 

このラプラス変換を使ってRL直列回路の過渡現象を解くときの手順は、おおよそ次のような手順になります。

 

ラプラス変換によるRL直列回路の過渡現象の解き方の手順

RL直列回路の回路方程式(微分方程式)をたてる

の微分方程式をラプラス変換する(初期条件も考慮する)

でラプラス変換した式を整理する(例:電流を求めるときは電流 $I(s)=$ … の式にする)

逆ラプラス変換をするために、の式を部分分数分解する

の式を逆ラプラス変換する

 

ラプラス変換によるRL直列回路の過渡現象の解き方の手順

 

少し複雑に思えるかもしれませんが、ラプラス変換を使って過渡現象を解く場合はだいたいこのような手順になるので、解き方のパターンをおぼえてしまえばそれほど難しく感じなくなります。

 

また、ラプラス変換を使った計算方法の場合、微分方程式を直接解いていく計算方法よりも計算の手間が少なくなることが多いです。(部分分数分解の計算がちょっとめんどくさい場合もありますが。)

 

このページでは、RL直列回路の過渡現象ラプラス変換を使って解いていますので、ラプラス変換を使った過渡現象の解き方の参考にしてみてください。

 

変数分離法を使ったRL直列回路の過渡現象の解き方については、こちらのRL直列回路の過渡現象の解き方のページを参考にしてみてください。

 

 

RL直列回路に流れる電流の求め方

では、ラプラス変換を使って、スイッチ $\mathrm{S}$ をONしたときのRL直列回路に流れる電流を求めてみます。

 

まず初めに、回路の回路方程式をたてます。

 

回路に流れる電流を $i(t)$[$\mathrm{A}$]とすると、抵抗 $R$ での電圧降下は $R\, i(t)$[$\mathrm{V}$]、コイル $L$ での電圧降下は $L\dfrac{d\, i(t)}{dt}$[$\mathrm{V}$]なので、

 

回路電流i(t)と抵抗とコイルの電圧降下

 

この回路にキルヒホッフの第二法則(電圧則)を適用すると、回路方程式は次の①式(微分方程式)で与えられます。

 

$E=R\, i(t)+L\dfrac{d\, i(t)}{dt}$ …①

 

この①式の微分方程式をラプラス変換を使って解いていきます。①式をラプラス変換すると、次の②式になります。

 

$\dfrac{E}{s} =R\, I(s)+L\left( s\, I(s)-i(0)\right)$ …②

 

ラプラス変換前とラプラス変換後の式の対応

 

ラプラス変換するときは、ラプラス変換の公式を利用します。ラプラス変換の公式については、こちらのラプラス変換の公式のページを参考にしてみてください。

 

②式中の $i(0)$ は初期条件( $t=0$ のときの電流の値)なので、$i(0)=0$ とすると②式は次の③式になります。

 

$\dfrac{E}{s} =R\, I(s)+L\left( s\, I(s)-0\right)$

 

$\therefore \dfrac{E}{s} =R\, I(s)+s\, L\, I(s)$ …③

 

この③式を $I(s)$ で整理すると、

 

$(R+s\, L)I(s)=\dfrac{E}{s}$

 

$I(s)=\dfrac{E}{s}\dfrac{1}{R+s\, L}$

 

$I(s)=\dfrac{E}{s(s\, L+R)}$

 

右辺の分母と分子を $L$ で割ると、

 

$I(s)=\dfrac{\dfrac{E}{L}}{s\left( s+\dfrac{R}{L}\right)}$

 

$I(s)=\dfrac{E}{L}\dfrac{1}{s\left( s+\dfrac{R}{L}\right)}$ …④

 

となり、この④式を逆ラプラス変換すると $t$ 領域(時間 $t$ の領域)の関数 $i(t)$ を求めることができます。なので、④式を逆ラプラス変換するために、④式の右辺を部分分数分解します。

 

$\dfrac{E}{L}\dfrac{1}{s\left( s+\dfrac{R}{L}\right)} =\dfrac{\alpha}{s} +\dfrac{\beta}{s+\dfrac{R}{L}}$ …⑤ とおくと、

 

⑤式の右辺 $=\dfrac{\alpha}{s} +\dfrac{\beta}{s+\dfrac{R}{L}}$

 

$=\dfrac{\alpha\left( s+\dfrac{R}{L}\right) +\beta\, s}{s\left( s+\dfrac{R}{L}\right)}$

 

$=\dfrac{\alpha\, s+\alpha\dfrac{R}{L} +\beta\, s}{s\left( s+\dfrac{R}{L}\right)}$

 

$=\dfrac{(\alpha +\beta )s+\alpha\dfrac{R}{L}}{s\left( s+\dfrac{R}{L}\right)}$ …⑥

 

この⑥と⑤式の左辺より、次の2つの式が成り立ちます。

 

$\left\{\begin{array}{l} \alpha +\beta =0 \quad\text{…⑦} \\ \alpha\dfrac{R}{L} =\dfrac{E}{L} \quad\text{…⑧} \end{array}\right.$

 

⑧式より、$\alpha\, R=E$ なので、

 

$\therefore\alpha =\dfrac{E}{R}$ …⑨

 

となります。⑨を⑦式に代入すると、$\dfrac{E}{R} +\beta =0$ なので、

 

$\therefore\beta =-\dfrac{E}{R}$ …⑩

 

となります。したがって、$I(s)=\dfrac{E}{L}\dfrac{1}{s\left( s+\dfrac{R}{L}\right)}$ は次のように部分分数分解できます。

 

$I(s)=\dfrac{E}{L}\dfrac{1}{s\left( s+\dfrac{R}{L}\right)}$

 

$=\dfrac{\alpha}{s} +\dfrac{\beta}{s+\dfrac{R}{L}}$

 

$=\dfrac{\dfrac{E}{R}}{s} +\dfrac{-\dfrac{E}{R}}{s+\dfrac{R}{L}}$ (⑨と⑩を代入

 

$\therefore I(s)=\dfrac{E}{R}\dfrac{1}{s} -\dfrac{E}{R}\dfrac{1}{s+\dfrac{R}{L}}$ …⑪

 

$I(s)$ を部分分数分解できたので、あとは⑪式を逆ラプラス変換するだけです。⑪式を逆ラプラス変換すると、

 

$i(t)=\mathcal{L}^{-1}\left[\, I(s)\,\right]$

 

$=\mathcal{L}^{-1}\left[\,\dfrac{E}{R}\dfrac{1}{s}\,\right] +\mathcal{L}^{-1}\left[\, -\dfrac{E}{R}\dfrac{1}{s+\dfrac{R}{L}}\,\right]$

 

$=\dfrac{E}{R}\mathcal{L}^{-1}\left[\,\dfrac{1}{s}\,\right] -\dfrac{E}{R}\mathcal{L}^{-1}\left[\,\dfrac{1}{s+\dfrac{R}{L}}\,\right]$

 

$=\dfrac{E}{R} -\dfrac{E}{R} e^{-\frac{R}{L} t}$

 

$\therefore i(t)=\dfrac{E}{R} -\dfrac{E}{R} e^{-\frac{R}{L} t}$ …⑫ (これが回路に流れる電流

 

となり、RL直列回路に流れる電流 $i(t)$ が求められました。

 

逆ラプラス変換前と逆ラプラス変換後の式の対応

 

ちなみに、この⑫式の右辺の第1項を定常解、第2項を過渡解といいます。

 

定常解と過渡解

 

補足

部分分数分解の別のやり方

$\dfrac{E}{L}\dfrac{1}{s\left( s+\dfrac{R}{L}\right)} =\dfrac{\alpha}{s} +\dfrac{\beta}{s+\dfrac{R}{L}}$ …⑤ の部分分数分解で、$\alpha$ と $\beta$ を求める方法には次のような方法もあります。

 

$\alpha$ を求めるとき

⑤式の両辺に $s$ をかけて、

 

$\dfrac{E}{L}\dfrac{1}{s+\dfrac{R}{L}} =\alpha +\dfrac{s\,\beta}{s+\dfrac{R}{L}}$ (右辺第1項は $\alpha$ だけになる

 

$s=0$ を代入すると、

 

$\dfrac{E}{L}\dfrac{1}{0+\dfrac{R}{L}} =\alpha$ ($\beta$ が消える

 

$\alpha =\dfrac{E}{L}\times\dfrac{L}{R} =\dfrac{E}{R}$

 

$\therefore\alpha =\dfrac{E}{R}$ (これが $\alpha$

 

$\beta$ を求めるとき

⑤式の両辺に $s+\dfrac{R}{L}$ をかけて、

 

$\dfrac{E}{L}\dfrac{1}{s} =\dfrac{\alpha}{s}\left( s+\dfrac{R}{L}\right) +\beta$ (右辺第2項は $\beta$ だけになる

 

$s=-\dfrac{R}{L}$ を代入すると、

 

$\dfrac{E}{L}\dfrac{1}{-\dfrac{R}{L}} =\beta$ ($\alpha$ が消える

 

$\beta =\dfrac{E}{L}\times\left( -\dfrac{L}{R}\right) =-\dfrac{E}{R}$

 

$\therefore\beta =-\dfrac{E}{R}$ (これが $\beta$

 

となり、ここで求めた $\alpha$ と $\beta$ は、さきほど求めた $\alpha$ と $\beta$ に一致します。

 

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RL直列回路に流れる電流のグラフ

電流 $i(t)$ のグラフを書いてみると、次のようなグラフになり、

 

RL直列回路に流れる電流i(t)のグラフ

 

RL直列回路に流れる電流 $i(t)$ は時間がたつにつれて増加がゆるやかになり、ある程度時間が経過して定常状態に達すると、$i(t)=\dfrac{E}{R}$ の一定値になります。

 

定常状態に達すると電流は一定値になる

 

なお、RL直列回路の時定数 $\tau$ は、$\tau=\dfrac{L}{R}$ になります。

 

RL直列回路の時定数

 

時定数は、過渡状態での変化の速さを表わす値です。時定数については、こちらの時定数のページを参考にしてみてください。

 

以上をまとめると、次のようになります。

 

ラプラス変換によるRL直列回路の過渡現象の解き方のまとめ

ラプラス変換によるRL直列回路の過渡現象の解き方

RL直列回路の回路方程式(微分方程式)をたてる

の微分方程式をラプラス変換する(初期条件も考慮する)

でラプラス変換した式を整理する(例:電流を求めるときは電流 $I(s)=$ … の式にする)

逆ラプラス変換をするために、の式を部分分数分解する

の式を逆ラプラス変換する

 

RL直列回路の電流の過渡現象の式

$i(t)=\dfrac{E}{R} -\dfrac{E}{R} e^{-\frac{R}{L} t}$

 

RL直列回路の電流の過渡現象のグラフ

 

RL直列回路の電流の過渡現象のグラフ

 

RL直列回路の時定数

$\tau = \dfrac{L}{R}$

 

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微分方程式を直接解く過渡現象の解き方については、こちらのRL直列回路の過渡現象の解き方のページを参考にしてみてください。こちらのページでは、抵抗 $R$ の電圧、コイル $L$ の電圧なども求めています。
ラプラス変換を使ったRC直列回路の過渡現象の解き方については、こちらのラプラス変換によるRC直列回路の過渡現象の解き方のページを参考にしてみてください。
そもそも過渡現象ってなんでしたっけ?という方は、こちらの過渡現象とはのページを参考にしてみてください。



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