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電験三種「理論」平成21年度 問4の過去問と解説
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電験三種「理論」平成21年度問4の過去問の解説です。
電験三種「理論」平成21年度(2009年度) 問4
電験三種「理論」の平成21年度問4(A問題)の問題です。
この問題を解くためのポイントとコツ
この問題を解くためのポイントとコツは、
- 電流が流れる導線の各部分毎に分けて考えよう!
- 直線状の導線の延長上の磁界の大きさはどうなるの?
- 電流と磁界に関する基本的な公式は分かりますか?
- 円形コイルが完全な円になっていない場合、円の中心に作られる磁界の大きさはどうなるの?
- 磁界はベクトルなので向きがありますよ!
です。
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電験三種「理論」平成21年度(2009年度) 問4(A問題)の解説
この過去問は、扇形導線に直流電流が流れているときに、その扇形の中心(扇形を作る円弧の中心)に作られる磁界の大きさはいくらか? という問題です。
こんな感じの問題は電験三種の理論でよく出題されていますが、解き方はどの問題もほぼ同じです。なので、解き方の流れを必ずおぼえておくようにしましょう。
この問題の解き方としては、扇形導線を4つの部分に分け、分けたそれぞれの部分に流れる電流により点 $\mathrm{O}$ に作られる磁界を求め、それらの磁界のベクトル和を求めればいいです。
↑なんだか分かりにくい文章になってます? つまり、こういうことです。
@、A、B、Cそれぞれ独立に考えて計算していけばいいです。
では、@の部分に流れる電流が点 $\mathrm{O}$ に作る磁界から求めてみましょう。
@の部分に流れる電流が点Oに作る磁界
@の部分と点 $\mathrm{O}$ だけの図を書くと次のようになります。
@と点 $\mathrm{O}$ の位置関係は、同一面上にあって@の線分を延長したところに点 $\mathrm{O}$ がありますよね?
このような場合は、@の部分に流れる電流によって点 $\mathrm{O}$ には磁界が作られません。(この理由はビオ・サバールの法則により説明できますが、電験三種ではそこまでの知識は必要ないでしょ?と私は勝手に思うので、ここでは説明は省略。)
なので、@の部分に流れる電流が点 $\mathrm{O}$ に作る磁界の大きさを $H_1$ とすると、
$\therefore H_1=0$ [$\mathrm{A/m}$] …D となります。
Aの部分に流れる電流が点Oに作る磁界
Aの部分と点 $\mathrm{O}$ だけの図を書くと次のようになります。
この場合も@と同じようにAと点 $\mathrm{O}$ の位置関係は、同一面上にあってAの部分を延長したところに点 $\mathrm{O}$ があります。
なので@と同様に、Aの部分に流れる電流が点 $\mathrm{O}$ に作る磁界の大きさを $H_2$ とすると、
$\therefore H_2=0$ [$\mathrm{A/m}$] …E となります。
Bの部分に流れる電流が点Oに作る磁界
Bの部分と点 $\mathrm{O}$ だけの図を書くと次のようになります。
このように円の $\dfrac{1}{4}$ の円弧とか半円の場合には、ぐるっと一周した円に流れる電流により作られる磁界を求め、$\dfrac{1}{4}$ の円弧の場合にはそれを $\dfrac{1}{4}$、半円の場合にはそれを $\dfrac{1}{2}$ して磁界を求めます。
ぐるっと一周した円に流れる電流により点 $\mathrm{O}$ に作られる磁界の大きさを $H_{30}$ とすると、円形コイルに流れる電流による円の中心の磁界の公式より、
$H_{30}=\dfrac{I}{2r} =\dfrac{8}{2\times 1} =\dfrac{8}{2} =4$ …F
Bの部分は $\dfrac{1}{4}$ の円弧なのでFを $\dfrac{1}{4}$ します。すると、求めたいBの部分に流れる電流が点 $\mathrm{O}$ に作る磁界の大きさ $H_3$ は、
$H_3=H_{30}\times\dfrac{1}{4} =4\times\dfrac{1}{4} =1$
$\therefore H_3=1$ [$\mathrm{A/m}$] …G となります。
Cの部分に流れる電流が点Oに作る磁界
Cの部分と点 $\mathrm{O}$ だけの図を書くと次のようになります。
この場合もBと同じように求めます。
ぐるっと一周した円に流れる電流により点 $\mathrm{O}$ に作られる磁界の大きさを $H_{40}$ とすると、円形コイルに流れる電流による円の中心の磁界の公式より、
$H_{40}=\dfrac{I}{2r} =\dfrac{8}{2\times 2} =\dfrac{8}{4} =2$ …H
Cの部分は $\dfrac{1}{4}$ の円弧なのでHを $\dfrac{1}{4}$ します。すると、求めたいCの部分に流れる電流が点 $\mathrm{O}$ に作る磁界の大きさ $H_4$ は、
$H_4=H_{40}\times\dfrac{1}{4} =2\times\dfrac{1}{4} =\dfrac{1}{2} =0.5$
$\therefore H_4=0.5$ [$\mathrm{A/m}$] …I となります。
以上より、@、A、B、Cの部分に流れる電流それぞれが点 $\mathrm{O}$ に作る磁界の大きさを求められたので、あとはベクトル和を求めるだけです。
ここではそれぞれの磁界を求めるときに磁界の「大きさ」で求めたので、ベクトル和を求めるためには向きを考えなければなりません。
@とAの部分の磁界の大きさはともにゼロなので、@とAについては特に考える必要はなく、考えなければならないのはBとCの部分です。
ベクトルの正方向を紙面の裏から表方向とすると、Bの部分に流れる電流が点 $\mathrm{O}$ に作る磁界の向きは右ねじの法則より紙面の裏から表方向になりますね。
つまり、磁界 $\boldsymbol{H_3}$ の向きは正方向(紙面の裏から表方向)なのでGより、
$\therefore \boldsymbol{H_3} =1$ [$\mathrm{A/m}$] …J となります。
次は、Cの部分についてです。
Cの部分に流れる電流が点 $\mathrm{O}$ に作る磁界の向きは、右ねじの法則より紙面の表から裏方向になります。
なので、磁界 $\boldsymbol{H_4}$ の向きは負方向(紙面の表から裏方向)なのでIより、
$\therefore \boldsymbol{H_4} =-0.5$ [$\mathrm{A/m}$] …K となります。($\boldsymbol{H_4}$ は負方向なのでマイナス!)
あとは、JとKのベクトル和を求めればいいです。
$\boldsymbol{H_3} +\boldsymbol{H_4} =1-0.5=0.5$
したがって、求める点 $\mathrm{O}$ における磁界の大きさは、$0.5$[$\mathrm{A/m}$] …(答) となります。
この問題を解くために使った公式
円形コイルに流れる電流による円の中心の磁界の公式:$H=\dfrac{I}{2r}$
解き方について
このページでの解き方は、それぞれの磁界の大きさを求めてから最後にそれぞれの磁界の向きについて考えましたが、初めからベクトルで考えて解いていってもいいですよ。
解き方(計算方法)は色々あるので、自分でやりやすいとか、簡単だと思う解き方で解いていきましょう。
右ねじの法則について
右ねじの法則は電流と磁界の向きを考えるときの基本なので、確実におぼえておくようにしましょう。「うーん、よく分からない!」という方は右ねじの法則のページを参考にしてみてください。
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ビオ・サバールの法則についてはこちらで解説していますので、磁界の公式の導き方などを勉強したい方は参考にしてみてください。
おすすめの電験三種の過去問題集はこちら、電験三種の参考書はこちら、電験三種用の数学参考書はこちらで紹介していますので参考にしてみてください。
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