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電験三種「理論」平成21年度 問2の過去問と解説
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電験三種「理論」平成21年度問2の過去問の解説です。
電験三種「理論」平成21年度(2009年度) 問2
電験三種「理論」の平成21年度問2(A問題)の問題です。
この問題を解くためのポイント
この問題を解くためのポイントは、
- クーロンの法則など点電荷に関する基本的な公式を知っているか?
- 電気力線や電界(電場)などの静電界に関する基本的なことを知っているか?
です。
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電験三種「理論」平成21年度(2009年度) 問2(A問題)の解説
(1)クーロンの法則に関する問題
問題文の記述(1)
二つの小さな帯電体の間に働く力の大きさは、それぞれの帯電体の電気量の和に比例し、その距離の2乗に反比例する。
(1)は「二つの小さな帯電体の間に働く力の大きさは、・・・」という文章で始まっていて、さらに続く文章には「○○に比例」とか「○○に反比例」と書いてあるので、クーロンの法則の公式について書いてある文章であることが分かります。
なので、書いてある文章がクーロンの法則の公式と合っているか?違っているか?が分かればいいです。
書いてある文章をそのまま式で書いてみましょう。
二つの小さな帯電体の間に働く力の大きさを $F$、それぞれの帯電体の電気量を $q_1$、$q_2$、二つの帯電体の距離を $r$、比例定数を $k$ とすると、問題文に書かれている意味の式は次のようになります。
この式はクーロンの法則の公式になっているでしょうか?
クーロンの法則の公式は、
$F=k\dfrac{q_1\times q_2}{r^2}$ ですよね?
問題文の意味の式とクーロンの法則の公式を見比べると、右辺の分子が違っていて、問題文の意味の式の方は二つの電気量の和(足し算)、クーロンの法則の公式の方は二つの電気量の積(掛け算)になっています。
なので、この(1)の文章は間違っていることになります。
(2)点電荷が作る電界に関する問題
問題文の記述(2)
点電荷が作る電界は点電荷の電気量に比例し、距離に反比例する。
(2)は「点電荷が作る電界は・・・」という文章で始まっていて、さらに続く文章には「○○に比例」とか「○○に反比例」と書いてあるので、点電荷が作る電界の公式について書いてある文章であることが分かります。
なので、書いてある文章が点電荷が作る電界の公式と合っているか?違っているか?が分かればいいです。
(1)と同じように、書いてある文章をそのまま式で書いてみましょう。
点電荷が作る電界を $E$、点電荷の電気量を $q$、距離を $r$、比例定数を $k$ とすると、問題文に書かれている意味の式は次のようになります。
この式は点電荷が作る電界の公式になっているでしょうか?
点電荷が作る電界の公式は、
$E=k\dfrac{q}{r^2}$ ですよね?
問題文の意味の式と点電荷が作る電界の公式を見比べると、右辺の分母が違っていて、問題文の意味の式の方は距離の1乗に反比例し、点電荷が作る電界の公式の方は距離の2乗に反比例になっています。(どちらも反比例ですが、1乗と2乗が違います。)
なので、この(2)の文章は間違っていることになります。
(3)電気力線の接線の方向と電界の方向に関する問題
問題文の記述(3)
電気力線上の任意の点での接線の方向は、その点の電界の方向に一致する。
(3)は「電気力線の接線の方向」が「電界の方向」と一致するか?しないか?が分かればいいです。
電気力線って何ですか?
電気力線の接線の方向と電界の方向って同じですか?違いますか?
みたいな問題です。
このような問題の場合は、実際に図を書いて確認してみるのがいいですよ。
ではまず、正の電荷と負の電荷を一つずつ書いて、電気力線を書いてみます。すると、次のようになります。
電気力線は正の電荷から出て負の電荷に向かう線で、電気力線は正の電荷から垂直に出て負の電荷に垂直に入るので上の図のようになります。
電気力線が書けたので、次は電気力線の接線の方向を図に書いてみます。接線は線に接する線なので次の図のようになります。
上の図では接線を長く書いているのでなんですが、接線を短く書くと、
となって、さらに矢印をものすごく短くして、最後のことろだけに矢印を書くと下の図のようになります。(言っている意味がちょっと分かりにくかったらごめんなさい。)
なので、「電気力線の接線の方向」っていうのは極々短い範囲で考えると「電気力線の方向」ということなんですね。
それで問題文に話を戻すと、これ(電気力線の接線の方向)が電界の方向に一致するか?ですが、電界の方向もプラスからマイナスになるので、つまり「一致する」になります。したがって、
「電気力線の接線方向」と「電界の方向」は一致する …(答)
となり、(3)は正しいことになります。
(4)等電位面上の正電荷に働くクーロン力に関する問題
問題文の記述(4)
等電位面上の正電荷には、その面に沿った方向に正のクーロン力が働く。
(4)も図を書いて考えてみましょう。
正電荷を一つ置いて等電位面を書いてみます。等電位面は電位が等しい面で、電気力線と垂直になるので次の図のようになります。
それで問題文(4)には「等電位面上の正電荷には、その面に沿った方向に正のクーロン力が働く。」と書いてありますが、この意味は、「等電位面上に正電荷を置いたら等電位面に沿って正電荷が動く。」という意味です。これを図に書いてみると、次のようになります。
これって違いますよね?
図がゴチャゴチャしていると分かりにくいので、正電荷だけの図にしてみます。
すると、正電荷が二つだけなのでこれらはお互いに反発する方向に動きます。左側の正電荷は固定されて動かないとすると右側の正電荷は次の図のように動きますよね?
なので、問題文の記述は間違っていることになります。
(電荷に働く力(クーロン力)の方向についてもうちょっと詳しく知りたい方はクーロンの法則のページを参考にしてみてください。)
(5)静電容量、電極板間の電界、誘電率に関する問題
問題文の記述(5)
コンデンサの電極板間にすき間なく誘電体を入れると、静電容量と電極板間の電界は、誘電体の誘電率に比例して増大する。
(5)の問題文は二つに分けて一つずつ考えていきましょう。
コンデンサの電極板間にすき間なく誘電体を入れると、静電容量は、誘電体の誘電率に比例して増大する、なの?
これは、コンデンサの静電容量の公式が分かれば簡単に分かりますね。コンデンサの静電容量の公式は、コンデンサの静電容量を $C$、誘電体の誘電率を $\varepsilon$、電極板面積を $S$、電極板間隔を $d$ とすると、
$C=\varepsilon\dfrac{S}{d}$ になります。
この式をみると、誘電体の誘電率 $\varepsilon$ が大きくなると静電容量 $C$ も大きくなるので、これは「増大する」で正しいですね。
では、次いってみましょう。
コンデンサの電極板間にすき間なく誘電体を入れると、電極板間の電界は、誘電体の誘電率に比例して増大する、なの?
これは、電束密度と電界の関係を表わした公式で考えてみましょう。
電束密度を $D$、誘電体の誘電率を $\varepsilon$、電極板間の電界を $E$ とすると、
$D=\varepsilon\, E$ …@ ですね。
それで@式を $E=\cdots$ に直すと次の式になります。
$E=\dfrac{D}{\varepsilon}$
この式をみると、誘電体の誘電率 $\varepsilon$ が大きくなると電極板間の電界 $E$ は小さくなるので、これは「増大する」は間違っていることになります。
(5)の問題文は、静電容量については正しい記述ですが、電極板間の電界については間違った記述になっているので、この(5)は間違っていることになります。
この問題のように、電験三種の正誤を問う問題では片方は合っていても、もう片方については間違っている場合もあるので、問題を解く際は気を付けるようにしましょう。
この問題を解くために使った公式
クーロンの法則の公式:$F=k\dfrac{q_1\, q_2}{r^2}$
点電荷が作る電界の公式:$E=k\dfrac{q}{r^2}$
コンデンサの静電容量の公式:$C=\varepsilon\dfrac{S}{d}$
電束密度と電界の公式:$D=\varepsilon\, E$
この問題でも電束密度の公式が使われています。電束密度の公式を忘れている人が多いですが、電験三種の理論の問題を解くときによく使われるのでおぼえておくようにしましょう。
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おすすめの電験三種の過去問題集はこちら、電験三種の参考書はこちら、電験三種用の数学参考書はこちらで紹介していますので参考にしてみてください。
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