スポンサーリンク



電験三種「理論」平成21年度 問8の過去問と解説

ページ内にPR・広告が含まれる場合があります。

電験三種「理論」平成21年度問8の過去問の解説です。

電験三種「理論」平成21年度(2009年度) 問8

電験三種「理論」の平成21年度問8(A問題)の問題です。
電験三種「理論」平成21年度(2009年度)問8の問題

この問題を解くためのポイントとコツ

この問題を解くためのポイントとコツは、

  1. スイッチ $\mathrm{S}$ が開いているときと閉じているときで分けて考えよう!
  2. 単相交流回路の計算方法は分かりますか?
  3. 抵抗が短絡されると抵抗には電流が流れない!(抵抗は無いのと同じ)
  4. 電流の比を求めるときは分母と分子を間違えないようにしよう!

です。

 

スポンサーリンク

スポンサーリンク


 

電験三種「理論」平成21年度(2009年度) 問8(A問題)の解説

この過去問は単相交流回路の問題で、スイッチ $\mathrm{S}$ が開いているときと閉じているときのそれぞれの電流の比と位相差の差を求める問題です。

 

では、スイッチ $\mathrm{S}$ が開いているときから計算していきましょう。

 

スイッチSが開いているとき

スイッチ $\mathrm{S}$ が開いているときの回路図は、次のようになりますね。(って、問題の回路図そのまんまです。)

 

電験三種「理論」平成21年度(2009年度)問8の問題の回路図

 

スイッチ $\mathrm{S}$ が開いているので、この回路は次のようなRL直列回路ということになります。

 

スイッチSが開いているときの回路図

 

それで問題文を見ると、「コイルを流れる電流の大きさが $I_1$」と書いているので、$I_1$ はつまり、回路全体に流れる電流になります。

 

電流I1は回路全体に流れる電流

 

なので、電流 $I_1$ を求めるためには、回路の合成インピーダンス $\dot{Z_1}$ を求めて、オームの法則を使えばいいですね。

 

この回路はRL直列回路で電源の角周波数が $\omega$ なので、回路の合成インピーダンス $\dot{Z_1}$ は、

 

$\dot{Z_1} =R+j\omega L=\sqrt{3}\,\omega L+j\omega L$ ($\because R=\sqrt{3}\,\omega L$)

 

$\therefore \dot{Z_1} =\sqrt{3}\,\omega L+j\omega L$ [$\Omega$] となります。

 

あとはオームの法則を使って電流 $\dot{I_1}$ を計算すると、

 

$\dot{I_1} =\dfrac{\dot{E}}{\dot{Z_1}} =\dfrac{\dot{E}}{\sqrt{3}\,\omega L+j\omega L}$ $=\dfrac{1}{\omega L}\left(\dfrac{1}{\sqrt{3} +j}\right)\dot{E}$ $=\dfrac{1}{\omega L}\left\{\dfrac{\sqrt{3} -j}{\left(\sqrt{3} +j\right)\left(\sqrt{3} -j\right)}\right\}\dot{E}$

 

$=\dfrac{1}{\omega L}\left(\dfrac{\sqrt{3} -j}{3+1}\right)\dot{E}$ $=\left(\dfrac{\sqrt{3} -j}{4\,\omega L}\right)\dot{E}$ $=\left(\dfrac{\sqrt{3}}{4\,\omega L} -j\dfrac{1}{4\,\omega L}\right)\dot{E}$

 

$\therefore \dot{I_1} =\left(\dfrac{\sqrt{3}}{4\,\omega L} -j\dfrac{1}{4\,\omega L}\right)\dot{E}$ [$\mathrm{A}$] …@ となります。

 

電流 $\dot{I_1}$ の式が求められたので、電源電圧 $\dot{E}$ の大きさを $E$ として電流 $\dot{I_1}$ の大きさ $I_1$ を求めます。

 

$I_1=|\dot{I_1} |$ $=\sqrt{\left(\dfrac{\sqrt{3}}{4\,\omega L}\right)^2 +\left(\dfrac{1}{4\,\omega L}\right)^2}\cdot E$ $=\sqrt{\dfrac{3+1}{\left( 4\,\omega L\right)^2}}\cdot E$ $=\sqrt{\dfrac{4}{\left( 4\omega L\right)^2}}\cdot E$ $=\dfrac{2E}{4\,\omega L}$ $=\dfrac{E}{2\,\omega L}$

 

$\therefore I_1=\dfrac{E}{2\,\omega L}$ [$\mathrm{A}$] …A

 

次は、@式より電源電圧 $\dot{E}$ に対する電流 $\dot{I_1}$ の位相差 $\theta_1$ を $\tan$ を使って求めます。(電流の比 $\dfrac{I_1}{I_2}$ については、電流 $I_2$ の式を計算してから求めます。)

 

$\tan\theta_1 =\dfrac{-\dfrac{1}{4\,\omega L}}{\dfrac{\sqrt{3}}{4\,\omega L}} =\dfrac{-1}{\sqrt{3}}$

 

$\theta_1 =\tan^{-1}\left(\dfrac{-1}{\sqrt{3}}\right) =-30^\circ$

 

タンジェント(tan)の説明図

 

$\therefore \theta_1 =-30^\circ$ …B となります。

 

ちなみに、@式の電源電圧 $\dot{E}$ と電流 $\dot{I_1}$ のベクトル図を、電圧 $\dot{E}$ を基準にして書くと次のようになります。($E$ はベクトル $\dot{E}$ の大きさを表わします。)

 

電流I1のベクトル図

 

スイッチSが閉じているとき

スイッチ $\mathrm{S}$ が閉じているときの回路図は、次のようになりますね。

 

スイッチSが閉じているときの回路図

 

スイッチ $\mathrm{S}$ が閉じているので、抵抗 $R$ は短絡されていることになります。なので、抵抗 $R$ には電流が流れないので、この回路は次のようにコイル $L$ だけの回路になります。

 

抵抗Rを無視したスイッチSが閉じているときの回路図

 

では、電流 $\dot{I_1}$ と同じように、オームの法則を使って電流 $\dot{I_2}$ を計算してみましょう。

 

$\dot{I_2} =\dfrac{\dot{E}}{j\omega L} =\dfrac{1}{j\omega L}\dot{E} =\dfrac{j}{j\times j\omega L}\dot{E}$ $=-j\dfrac{1}{\omega L}\dot{E}$

 

$\therefore \dot{I_2} =-j\dfrac{1}{\omega L}\dot{E}$ [$\mathrm{A}$] …C となります。

 

電流 $\dot{I_2}$ の式が求められたので、電源電圧 $\dot{E}$ の大きさを $E$ として電流 $\dot{I_2}$ の大きさ $I_2$ を求めます。

 

$I_2=|\dot{I_2} |=\sqrt{0^2+\left(\dfrac{1}{\omega L}\right)^2}\cdot E$ $=\sqrt{\dfrac{1}{\left(\omega L\right)^2}}\cdot E$ $=\dfrac{E}{\omega L}$

 

$\therefore I_2=\dfrac{E}{\omega L}$ [$\mathrm{A}$] …D

 

次は、C式より電源電圧 $\dot{E}$ に対する電流 $\dot{I_2}$ の位相差 $\theta_2$ を $\tan$ を使って求めます。

 

$\tan\theta_2 =\dfrac{-\dfrac{E}{\omega L}}{0} =-\infty$ ($\because$ゼロ分のなんとか(なんとか÷ゼロ)は無限大になります。)

 

$\theta_2 =\tan^{-1}\left( -\infty\right) =-90^\circ$

 

タンジェント(tan)の説明図

 

$\therefore \theta_2 =-90^\circ$ …E となります。

 

ちなみに、C式の電源電圧 $\dot{E}$ と電流 $\dot{I_2}$ のベクトル図を、電圧 $\dot{E}$ を基準にして書くと次のようになります。

 

電流I2のベクトル図

 

 

以上で電流 $I_1$ と $I_2$ の大きさと、位相差 $\theta_1$ と $\theta_2$ が求められたので、最後に電流の比 $\dfrac{I_1}{I_2}$ と位相差の差 $|\theta_1 -\theta_2 |$ を求めれば終わりです。

 

A、Dより電流の比 $\dfrac{I_1}{I_2}$ は、

 

$\dfrac{I_1}{I_2} =\dfrac{\dfrac{E}{2\,\omega L}}{\dfrac{E}{\omega L}} =\dfrac{1}{2}$

 

$\therefore \dfrac{I_1}{I_2} =\dfrac{1}{2}$ …(答)

 

B、Eより位相差の差 $|\theta_1 -\theta_2 |$ は、

 

$|\theta_1 -\theta_2 | =|-30^\circ -\left( -90^\circ\right) |$ $=|-30^\circ +90^\circ |$ $=|60^\circ |$ $=60^\circ$

 

$\therefore |\theta_1 -\theta_2 |=60^\circ$ …(答)

 

となり、(2)が正解になります。

 

この問題を解くために使った公式

 

オームの法則の公式:$\dot{I} =\dfrac{\dot{E}}{\dot{Z}}$

 

RL直列回路のインピーダンスの公式:$\dot{Z} =R+j\omega L$

 

三角関数の公式($\tan$):$\tan\theta =\dfrac{b}{a}$

 

角度を求める公式($\tan$):$\theta =\tan^{-1}\dfrac{b}{a}$

 

ベクトルの大きさの公式:$|\dot{r} |=\sqrt{a^2+b^2}$

 

交流回路の計算では虚数単位「$j$」がよく使われますが、この虚数単位「$j$」が苦手という方はけっこういます。
電験三種の問題では、「虚数単位「$j$」を二乗すると「-1」になる」という基本だけおぼえておけばほとんどの計算問題は解けますので、あまり苦手意識を持たないようにしましょう。慣れれば簡単です。

 

また、電験三種の問題では、この問題のように比を求める問題が出題されることがあります。求める比の分母と分子を間違うと、間違った選択肢を選んでしまうこともあるので気を付けましょう!
ちなみにこの問題の場合、$I_1$ と $I_2$ を $\dfrac{I_2}{I_1}$ と求めてしまうと選択肢の(4)を選んでしまい不正解になってしまいますよ。

 

スポンサーリンク

スポンサーリンク


 

おすすめの電験三種の過去問題集はこちら電験三種の参考書はこちら電験三種用の数学参考書はこちらで紹介していますので参考にしてみてください。

 

このページに掲載の問題は、(一財)電気技術者試験センターが作成した第三種電気主任技術者試験(電験三種)の問題です。


スポンサーリンク


電験三種「理論」平成21年度 問8の過去問と解説 関連ページ

電験三種「理論」平成21年度 問1の過去問と解説
電験三種「理論」平成21年度(2009年度)問1の過去問と解説です。この過去問は電圧、電界、コンデンサに関する基本的な公式が分かれば解ける問題です。
電験三種「理論」平成21年度 問2の過去問と解説
電験三種「理論」平成21年度(2009年度)問2の過去問と解説です。この過去問は静電界に関する基本的な知識の正誤を問う問題です。
電験三種「理論」平成21年度 問3の過去問と解説
電験三種「理論」平成21年度(2009年度)問3の過去問と解説です。この過去問はコイルの磁束鎖交数とコイルに蓄えられる磁気エネルギーに関する問題です。
電験三種「理論」平成21年度 問4の過去問と解説
電験三種「理論」平成21年度(2009年度)問4の過去問と解説です。この過去問は扇形導線に流れる電流により作られる磁界に関する問題です。電験三種でよく出題されやすいパターンの問題です。
電験三種「理論」平成21年度 問5の過去問と解説
電験三種「理論」平成21年度(2009年度)問5の過去問と解説です。この過去問はコンデンサが直列・並列接続、電源が直列・並列に接続されているときの電界のエネルギー(静電エネルギー)を求める問題です。
電験三種「理論」平成21年度 問6の過去問と解説
電験三種「理論」平成21年度(2009年度)問6の過去問と解説です。この過去問は抵抗が直列接続、並列接続された直流回路の基本的な問題で、与えられた電圧・電流の回路条件から抵抗値を求める問題です。ここではキルヒホッフの法則を使って解いています。
電験三種「理論」平成21年度 問7の過去問と解説
電験三種「理論」平成21年度(2009年度)問7の過去問と解説です。この過去問は単相3線式交流回路の計算問題で、3線に流れる各線電流の大きさの大小関係を求める問題です。電源毎に各負荷に流れる電流を求め、キルヒホッフの法則(電流則)を適用して各線電流を求めます。
電験三種「理論」平成21年度 問9の過去問と解説
電験三種「理論」平成21年度(2009年度)問9の過去問と解説です。この過去問は正弦波交流電流に関する問題で、電流の瞬時値がある値になるときの時刻を求める問題です。電気の問題と言うよりも、ほぼ数学の問題に近いです。