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電験三種「理論」平成21年度 問3の過去問と解説

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電験三種「理論」平成21年度問3の過去問の解説です。

電験三種「理論」平成21年度(2009年度) 問3

電験三種「理論」の平成21年度問3(A問題)の問題です。
電験三種「理論」平成21年度(2009年度)問3の問題

この問題を解くためのポイント

この問題を解くためのポイントは、

  1. 磁束鎖交数と磁束は違いますよ!
  2. コイルに関する磁気学の基本的な公式を知っているか?

です。ポイント2.が分かっていればポイント1.も分かるんですけどね・・・

 

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電験三種「理論」平成21年度(2009年度) 問3(A問題)の解説

(ア)コイルの磁束鎖交数を求める問題

(ア)はコイルの磁束鎖交数を求める問題で、磁束鎖交数の公式が分かっていれば簡単に求められます。が、磁束鎖交数と磁束をうやむやにおぼえていると、はて?何だったかなぁ?となってしまいます。

 

磁束鎖交数の公式は、磁束鎖交数を $\varPsi$[$\mathrm{Wb}$]、コイルの巻数を $n$[回]、磁束を $\phi$[$\mathrm{Wb}$]、コイルのインダクタンスを $L$[$\mathrm{H}$]、コイルに流れる電流を $I$[$\mathrm{A}$]とすると、次の式になります。

 

$\varPsi =n\,\phi =L\, I$ …@

 

@式をみると分かるように、磁束 $\phi$ にコイルの巻数 $n$ をかけたものが磁束鎖交数 $\varPsi$ になります。

 

磁束と磁束鎖交数の違い

 

それで、問題文を読むとコイルのインダクタンス $L$ とコイルに流れる電流 $I$ が与えられているので、それらを@式に代入すると磁束鎖交数が求められますね。では、代入しましょう。

 

$\varPsi_1 =L\, I=1\times 10^{-3}\times 10$ $=1\times 10^{-2}$

 

$\therefore \varPsi_1 =1\times 10^{-2}$ [$\mathrm{Wb}$] …A …(答)

 

となり、磁束鎖交数 $\varPsi_1$ が求められました。

 

(イ)コイルに蓄えられる磁気エネルギーを求める問題

(イ)はコイルに蓄えられる磁気エネルギーを求める問題で、磁気エネルギーの公式が分かっていれば簡単に求められます。

 

磁気エネルギーの公式は、コイルに蓄えられる磁気エネルギーを $W$[$\mathrm{J}$]、コイルのインダクタンスを $L$[$\mathrm{H}$]、コイルに流れる電流を $I$[$\mathrm{A}$]とすると、次の式になります。

 

$W=\dfrac{1}{2} LI^2$ …B

 

コイルのインダクタンス $L$ とコイルに流れる電流 $I$ は問題文で与えられているので、この問題も公式(B式)にあてはめるだけですね。では、代入しましょう。

 

$W_1=\dfrac{1}{2} LI^2=\dfrac{1}{2}\times 1\times 10^{-3}\times 10^2$ $=0.5\times 10^{-1}$ $=5\times 10^{-2}$

 

$\therefore W_1=5\times 10^{-2}$ [$\mathrm{J}$] …C …(答)

 

となり、コイルに蓄えられる磁気エネルギー $W_1$ が求められました。

 

(ウ)コイルに流れる電流が変化したときの磁束鎖交数と磁気エネルギーの比を求める問題

(ウ)はコイルに流れる電流が変化したときの磁束鎖交数と磁気エネルギーの比を求める問題なので、電流が変化する前後それぞれの磁束鎖交数と磁気エネルギーが分かれば、あとは、それらの比を求めるだけです。

 

電流が変化する前のコイルに流れる電流は $10\,\mathrm{A}$ で、このときの磁束鎖交数と磁気エネルギーは(ア)と(イ)で求められているので、これは計算する必要はないですね。

 

では、コイルに流れる電流が変化した後、つまり、電流が $30\,\mathrm{A}$ のときについて計算しましょう。

 

電流が $30\,\mathrm{A}$ のときの磁束鎖交数 $\varPsi_2$ は、

 

$\varPsi_2 =L\, I_2=1\times 10^{-3}\times 30$ $=3\times 10^{-2}$

 

$\therefore \varPsi_2 =3\times 10^{-2}$ …D

 

となります。

 

電流が $30\,\mathrm{A}$ のときの磁気エネルギー $W_2$ は、

 

$W_2=\dfrac{1}{2} L{I_2}^2=\dfrac{1}{2}\times 1\times 10^{-3}\times 30^2$ $=\dfrac{900}{2}\times 10^{-3}$ $=450\times 10^{-3}$ $=45\times 10^{-2}$

 

$\therefore W_2=45\times 10^{-2}$ …E

 

となります。

 

あとは、電流変化前後の比を求めればいいですね。

 

問題の選択肢をみると、$\varPsi_2$ は $\varPsi_1$ の何倍?と書いてあるので、磁束鎖交数の比は $\dfrac{\varPsi_2}{\varPsi_1}$ で求めればいいですね。AとDをこれに代入しましょう。

 

$\dfrac{\varPsi_2}{\varPsi_1} =\dfrac{3\times10^{-2}}{1\times 10^{-2}} =3$

 

$\therefore \varPsi_2$ は $\varPsi_1$ の $3$ 倍 …(答)

 

磁気エネルギーの比についても同じように求めます。

 

問題の選択肢をみると、$W_2$ は $W_1$ の何倍?と書いてあるので、磁気エネルギーの比は $\dfrac{W_2}{W_1}$ で求めればいいですね。CとEをこれに代入しましょう。

 

$\dfrac{W_2}{W_1} =\dfrac{45\times 10^{-2}}{5\times 10^{-2}} =9$

 

$\therefore W_2$ は $W_1$ の $9$ 倍 …(答)

 

以上で、(ア)、(イ)、(ウ)の答を求めることができました。

 

この問題を解くために使った公式

 

磁束鎖交数の公式:$\varPsi =n\,\phi =L\, I$

 

コイルに蓄えられる磁気エネルギーの公式:$W=\dfrac{1}{2} LI^2$

 

補足

(ア)と(イ)だけ解ければ正解できます

この問題には(ア)、(イ)、(ウ)の3問があり、(ア)と(イ)は公式にあてはめるだけの問題で、(ウ)はちょっと考える問題です。
問題の選択肢と答を照らし合わせてみると、実はこの問題は(ウ)の答が分からなくても(ア)と(イ)が確実に正解できれば正しい答を選ぶことができます。

 

(ウ)の答が分からなくても(ア)と(イ)の答がわかれば正解できる

 

このように電験三種の問題では、すべての答が分からなくても正解を選ぶことができる問題もありますので、すべて解けないからといって捨て問題にはしないようにしましょう。1問5点は大きいですよ!

 

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おすすめの電験三種の過去問題集はこちら電験三種の参考書はこちら電験三種用の数学参考書はこちらで紹介していますので参考にしてみてください。

 

このページに掲載の問題は、(一財)電気技術者試験センターが作成した第三種電気主任技術者試験(電験三種)の問題です。


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