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RL直列回路の過渡現象の解き方

RL直列回路に流れる電流の一般解の求め方

次の図のように直流電源 $E$[$ \mathrm{V} $]に抵抗 $R$[$\Omega$]とコイル $L$[$ \mathrm{H} $]が直列に接続された $RL$ 直列回路において、回路に流れる電流の一般解を求めてみます。

 

RL直列回路の回路図

 

ここで、一般解を求めるとは、定常状態の領域を表わす定常解と過渡状態の領域を表わす過渡解を合わせたもの(式)を求めることで、「一般解を求める=回路の過渡現象を解く」とほぼ同じ意味と思っておけばいいでしょう。

 

それから、回路の過渡現象を解く基本的な手順(流れ)は次のようになります。

 

回路の過渡現象を解く基本的な手順

@対象の回路の回路方程式(微分や積分が含まれる)をたてる
A初期条件を考慮して@の微分方程式(または積分方程式)を解く

 

ざっくり言ってしまえばこれだけですが、上に記載した解く手順Aの「微分方程式(または積分方程式)を解く」ことが回路によっては大変になったりします。

 

それでは、$RL$ 直列回路($LR$ 直列回路)に流れる電流の一般解を求めてみます。

 

まず初めに、回路の回路方程式をたてます。

 

回路に流れる電流を $i(t)$[$ \mathrm{A} $]として、

 

RL直列回路と流れる電流

 

この回路にキルヒホッフの第二法則(電圧則)を適用すれば、回路方程式は次の@式(微分方程式)で与えられます。

 

$E = R \, i(t) + L \dfrac{d \, i(t)}{dt}$ …@

 

RL直列回路の電圧降下

 

回路方程式がたてられたので、あとは@式の微分方程式を解くだけです。

 

微分方程式はその方程式の形で色々な解き方があったり、ラプラス変換を使って解いたりすることができますが、ここでは微分方程式の解法の一つである変数分離法を使って解くことにします。(この形の微分方程式を解くときは、変数分離法が一番簡単(計算はめんどうですが、解き方はおぼえやすい)だと思います。)

 

変数分離法は名前の通り、変数を左辺と右辺に分離して解いていく方法です。
@式の場合、電流 $i(t)$ と時間 $t$ が変数なので、電流 $i(t)$ に関するものは左辺に、時間 $t$ に関するものは右辺になるように@式を変形します。(電源電圧 $E$ と抵抗 $R$ とコイルのインダクタンス $L$ は定数なので、左辺と右辺どちらにあってもいいです。)

 

@式の $L \dfrac{d \, i(t)}{dt}$ を左辺に、$E$ を右辺に移動します。すると、$L \dfrac{d \, i(t)}{dt} = E - R \, i(t)$

 

上式の両辺を $L$ で割ります。$\dfrac{d \, i(t)}{dt} = \dfrac{E - R \, i(t)}{L}$

 

両辺を $E - R \, i(t)$ で割ります。$\dfrac{1}{E - R \, i(t)} \cdot \dfrac{d \, i(t)}{dt} = \dfrac{1}{L}$

 

両辺に $dt$ をかけます。$\dfrac{1}{E - R \, i(t)} \cdot d \, i(t) = \dfrac{1}{L} \cdot dt$

 

計算をしやすくするため、もうちょっと変形しておきます。

 

両辺にマイナスをかけて、$\dfrac{1}{R \, i(t) - E} \cdot d \, i(t) = -\dfrac{1}{L} \cdot dt$

 

両辺の分母を $R$ で割って、$\dfrac{1}{\dfrac{R \, i(t) - E}{R}} \cdot d \, i(t) = -\dfrac{1}{\dfrac{L}{R}} \cdot dt$

 

$\therefore \dfrac{1}{i(t) - \dfrac{E}{R}} \cdot d \, i(t) = -\dfrac{R}{L} \cdot dt$ …A

 

これで左辺は電流 $i(t)$(変数)に関するもの、右辺は時間 $t$(変数)に関するものとなり、2つの変数を左辺と右辺に分離することができました。(定数は変数ではないので、左辺にあっても右辺にあってもいいです。)

 

変数と定数の別・・・A式

 

変数を分離できたので、あとは両辺を積分して計算を続けていきます。

 

A式の両辺を積分すると(両辺に積分記号を付けるだけ)、

 

$\displaystyle\int \dfrac{1}{i(t) - \dfrac{E}{R}} \, d \, i(t) = -\int \dfrac{R}{L} \, dt$ …B となります。

 

では、B式の左辺から計算してみましょう。

 

B式の左辺は $\displaystyle\int \dfrac{1}{x} \, dx$ の形の積分なので、積分の公式より、

 

$\text{B式の左辺} = \displaystyle\int \dfrac{1}{i(t) - \dfrac{E}{R}} \, d \, i(t)$ $= \log_e \left| i(t) - \dfrac{E}{R} \right| + A$ ($A$ は積分定数) …C

 

C式に絶対値が付いているので、これを外しましょう。

 

絶対値の中は $i(t) - \dfrac{E}{R}$ ですが、$i(t)$ は回路に流れる電流で、$\dfrac{E}{R}$ はコイル $L$ が短絡された状態(つまり、定常状態)での電流なので、$i(t) \leqq \dfrac{E}{R}$ となり、絶対値の中は常にゼロ以下になります。

 

なので、絶対値の中 $\left( i(t) - \dfrac{E}{R} \right)$ にマイナスをかけると絶対値を外すことができます。つまり、

 

$\log_e \left| i(t) - \dfrac{E}{R} \right| + A$ $= \log_e \left( \dfrac{E}{R} - i(t) \right) + A$ …D となります。

 

したがってC式とD式より、$\text{B式の左辺} = \log_e \left( \dfrac{E}{R} - i(t) \right) + A$ …E となります。

 

これでB式の左辺は計算できたので、次はB式の右辺について考えます。

 

$\dfrac{R}{L}$ は定数なので、そのまま積分の外に出します。すると、

 

$\text{B式の右辺} = -\displaystyle\int \dfrac{R}{L} \, dt$ $= -\dfrac{R}{L} \displaystyle\int \, dt$ $= -\dfrac{R}{L} \cdot t + B$ ($B$ は積分定数) …F となります。

 

以上でB式の左辺と右辺が計算できたので、E、F式をB式に戻すと次のG式になります。

 

$\log_e \left( \dfrac{E}{R} - i(t) \right) + A$ $= -\dfrac{R}{L} \cdot t + B$ …G

 

G式には $A$ と $B$ の2つの積分定数があるので、積分定数を $D$ として1つにまとめてしまいます。(つまり、$B - A = D$ とおく)

 

$\log_e \left( \dfrac{E}{R} - i(t) \right) = -\dfrac{R}{L} \cdot t + D$

 

対数の定義より、この式を展開すると、

 

$\dfrac{E}{R} - i(t) = e^{-\frac{R}{L} t + D}$ 、 $\dfrac{E}{R} - i(t) = e^{-\frac{R}{L} t} \cdot e^D$  $\therefore \dfrac{E}{R} - i(t) = e^D \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$ …H

 

あとは、H式の中の積分定数を求めます。積分定数は回路の初期条件をH式に代入すれば求められ、この回路の場合、時間 $t = 0$ のときは回路に流れる電流がゼロなので、初期条件は $t = 0$、$i(t) = 0$ になります。

 

回路の初期条件の説明図(t=0、i=0)

 

$t = 0$、$i(t) = 0$ をH式に代入すると、

 

$\dfrac{E}{R} - 0 = e^D \cdot e^{-\frac{R}{L} \times 0}$ 、 $\dfrac{E}{R} = e^D \cdot e^0 = e^D \cdot 1 = e^D$  $\therefore e^D = \dfrac{E}{R}$ …I

 

I式の両辺の対数をとって $D = \cdots$ を求めてもいいのですが、H式をみると $e^D$ をそのまま代入できるので、IをH式にそのまま代入します。すると、

 

$\dfrac{E}{R} - i(t) = \dfrac{E}{R} \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$ 、 $-i(t) = -\dfrac{E}{R} + \dfrac{E}{R} \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$

 

$\therefore i(t) = \dfrac{E}{R} - \dfrac{E}{R} \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$ …J (←これが回路電流の一般解)

 

となり、$RL$ 直列回路に流れる電流の一般解が求められました。

 

RL直列回路に流れる電流のグラフ

$RL$ 直列回路に流れる電流の一般解が求められたので、次は回路電流 $i(t)$ のグラフを書いてみます。

 

先ほど求めた電流の式(J式)より、$RL$ 直列回路の回路電流の式は次のようになります。

 

$i(t) = \dfrac{E}{R} - \dfrac{E}{R} \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$ …J

 

ちなみに、このJ式の右辺の第1項を定常項、第2項を過渡項といいます。

 

定常項と過渡項の説明図

 

J式のグラフを書くために、J式を第1項と第2項に分けて考え、$i_1(t) = \dfrac{E}{R}$ 、$i_2(t) = \dfrac{E}{R} \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$ とします。(つまり、$i(t) = i_1(t) - i_2(t)$)

 

まず $i_1(t)$ のグラフを書いてみます。$i_1(t)$ は定数(時間で変化しない一定の値)なので、次のようなグラフになります。

 

i1(t)のグラフ

 

次に $i_2(t)$ のグラフですが、$i_2(t)$ のグラフは、 $t=0$ のとき $i_2(0) = \dfrac{E}{R}$ となり、$t = \infty$ のとき $i_2 ( \infty ) = 0$ となるグラフで、次のようになります。
$\Big( \because i_2(0) = \dfrac{E}{R} \cdot e^{-\frac{R}{L} \times 0} = \dfrac{E}{R} \cdot e^{0}$ $= \dfrac{E}{R}$ 、 $i_2( \infty ) = \dfrac{E}{R} \cdot e^{-\frac{R}{L} \times \infty}$ $= \dfrac{E}{R \cdot e^{\frac{R}{L} \times \infty}}$ $= \dfrac{E}{\infty} =0 \Big)$

 

i2(t)のグラフ

 

$i_1(t)$ と $i_2(t)$ の2つのグラフを1つの座標上に重ねて書くと次のようになります。

 

一つの座標上に書いたi1(t)とi2(t)のグラフ

 

したがって、J式の $i(t)$ は $i(t) = i_1(t) - i_2(t)$ であり、$i_1(t)$ から $i_2(t)$ を引いたものが $i(t)$ になるので、$i(t)$ のグラフは次のようになります。

 

RL直列回路に流れる電流i(t)のグラフ

 

以上で $RL$ 直列回路に流れる電流 $i(t)$ のグラフが書けましたが、$i(t)$ のグラフを見ると $RL$ 直列回路の場合、回路に流れる電流はゼロから始まり、徐々に大きくなって、ある程度の時間が経過する(定常状態に達するという意味)と $\dfrac{E}{R}$ の大きさの電流が流れ続けることが分かります。

 

つまり、定常状態に達するとコイル $L$ は短絡されているのと同じということになります。(これ、大事!)

 

RL直列回路に流れる電流の説明図

 

ちなみに、$RL$ 直列回路の時定数 $\tau$ は、$\tau = \dfrac{L}{R}$ になります。

 

 


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RL直列回路の抵抗Rの電圧の一般解の求め方

$RL$ 直列回路に流れる電流 $i(t)$ は先ほどのJ式で与えられるので、J式を使うと、抵抗 $R$ にかかる電圧 $e_R(t)$[$ \mathrm{V} $]は次のようになります。

 

eR(t)はここの電圧

 

$e_R(t) = i(t) \cdot R$ $= \left( \dfrac{E}{R} - \dfrac{E}{R} \cdot e^{-\frac{R}{L} t} \right) \cdot R$ $= E - E \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$

 

$\therefore e_R(t) = E - E \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$ …K (←これが抵抗 $R$ の電圧の一般解)

 

電流を求めてしまえば、抵抗 $R$ の電圧の一般解は簡単に求められますね。

 

RL直列回路の抵抗Rの電圧のグラフ

グラフについては、電圧 $e_R(t)$ は $i(t)$ に $R$ をかけただけなので、$i(t)$ と同じような形のグラフで次のようになります。

 

RL直列回路の抵抗Rにかかる電圧のグラフ

 

このグラフをみると、抵抗 $R$ の電圧は $0$[$ \mathrm{V} $]から始まり、ある程度時間が経過する(定常状態に達するという意味)と電圧の大きさは $E$[$ \mathrm{V} $]になるのが分かります。

 

抵抗 $R$ の電圧 $e_R(t)$ が最終的に $E$[$ \mathrm{V} $]になるということは、電源の電圧がすべて抵抗 $R$ にかかることになるということです。

 

つまり、定常状態に達するとコイル $L$ が無いのと同じ(コイルが短絡された状態と同じ)ということになります。(これ、大事!)

 

RL直列回路のコイルLの電圧の一般解の求め方

コイル $L$ の電圧の一般解についても求めてみましょう。

 

ここでも先ほど求めた電流 $i(t)$ の式(J式)を使うと、コイル $L$ の電圧 $e_L(t)$[$ \mathrm{V} $]は次のようになります。

 

eL(t)はここの電圧

 

$e_L(t) = L \dfrac{d \, i(t)}{dt}$ $= L \dfrac{d}{dt} \left( \dfrac{E}{R} - \dfrac{E}{R} \cdot e^{-\frac{R}{L} t} \right)$

 

この式を解くとコイル $L$ の電圧 $e_L(t)$ を求めることができます。では、解いてみましょう。

 

$\dfrac{E}{R}$ は定数なので、微分の外に出してしまいます。

 

$e_L(t) = \dfrac{LE}{R} \cdot \dfrac{d}{dt} \left( 1 - e^{-\frac{R}{L} t} \right)$

 

$\dfrac{d}{dt} 1 = 0$ 、 $\dfrac{d}{dt} e^{-\frac{R}{L} t} = -\dfrac{R}{L} \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$ $\left( \because \text{微分の公式より、} \dfrac{d}{dx} e^{ax} = a \cdot e^{ax} \right)$ なので、

 

$e_L(t) = \dfrac{LE}{R} \Big\lbrace 0 - \left( -\dfrac{R}{L} \cdot e^{-\frac{R}{L} t} \right) \Big\rbrace$ $= \dfrac{LE}{R} \left( \dfrac{R}{L} \cdot e^{-\frac{R}{L} t} \right)$ $= E \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$

 

$\therefore e_L(t) = E \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$ …L (←これがコイル $L$ の電圧の一般解)

 

以上で $RL$ 直列回路のコイル $L$ の電圧の一般解が求められました。

 

RL直列回路のコイルLの電圧のグラフ

コイル $L$ の電圧 $e_L(t)$ が求められたのでグラフも書いてみます。

 

コイルLの電圧 $e_L(t)$ は、$t=0$ のとき $e_L(0) = E$ となり、$t = \infty$ のとき $e_L( \infty ) = 0$ となるグラフになり、次のようになります。
$\Big( \because e_L(0) = E \cdot e^{-\frac{R}{L} \times 0} = E \cdot e^0$ $= E$ 、 $e_L( \infty ) = E \cdot e^{-\frac{R}{L} \times \infty} = \dfrac{E}{e^{\frac{R}{L} \times \infty}}$ $= \dfrac{E}{\infty} = 0 \Big)$

 

RL直列回路のコイルLにかかる電圧のグラフ

 

このグラフをみると、コイル $L$ の電圧は $E$[$ \mathrm{V} $]から始まり、ある程度時間が経過する(定常状態に達するという意味)と電圧の大きさは $0$[$ \mathrm{V} $]になるのが分かります。

 

つまり、スイッチをONした直後は電源の電圧がすべてコイル $L$ にかかりますが、定常状態に達するとコイル $L$ には電圧がかからず、電源の電圧はすべて抵抗 $R$ にかかるということになります。(これ、大事!)

 

RL直列回路の過渡現象のまとめ

以上をまとめると次のようになります。

RL直列回路

 

RL直列回路の回路図

 

RL直列回路の過渡現象の解き方

@回路の回路方程式(微分方程式)をたてる
A初期条件を使って@の微分方程式を解いて電流の一般解を求める
B電圧の一般解はAで求めた電流の一般解を使って求める

 

RL直列回路の過渡現象の一般解の式

回路電流 $i(t)$ の一般解: $i(t) = \dfrac{E}{R} - \dfrac{E}{R} \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$

 

抵抗 $R$ の電圧の一般解: $e_R(t) = E - E \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$

 

コイル $L$ の電圧の一般解: $e_L(t) = E \cdot e^{-\frac{R}{L} t}$

 

RL直列回路の時定数

時定数: $\tau = \dfrac{L}{R}$

 

RL直列回路の過渡現象のグラフ

 

RL直列回路の回路電流のグラフ

 

RL直列回路の抵抗R、コイルLにかかる電圧のグラフ

 

 

 

過渡現象を解くためには微分方程式(または積分方程式)を解く必要があるため計算が大変になる場合もありますが、たいていの場合、決まった形の微分方程式を解くだけなので、初めは大変かもしれませんがパターンをおぼえて慣れれば大丈夫ですよ。

 

それから、電験二種の一次試験の理論では過渡現象の解き方などが出題されることがあり、$RL$ 直列回路と $RC$ 直列回路の過渡現象の解き方は過渡現象回路を解くための基本になるので、電験二種を受験する方は解き方をおぼえておくようにしましょう。

 

電験三種を受験する方は過渡現象の解き方までは分からなくてもいいと思いますが、$RL$ 直列回路と $RC$ 直列回路の過渡現象のグラフと時定数は必ずおぼえておくようにしましょう。

 

 

 

微分の公式についてはこちらの微分の公式のページ、積分の公式についてはこちらの積分の公式のページを参考にしてみてください。

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