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ビオ・サバールの法則とは?

ビオ・サバールの法則は電気磁気学の法則で、

 

電線に流れる電流によって作られる磁界の大きさ(強さ)を求めるときなどに使われる法則

 

です。

 

例えば、次の図のように直線状の電線や円形状の電線に電流が流れているとしますよね?

 

直線状の電線や円形状の電線に流れる電流

 

このときに、ある点に作られる磁界の大きさはいくら?

 

というときにビオ・サバールの法則を使うと、ある点に作られる磁界の大きさを求めることができます。

 

点Pに作られる磁界の大きさはいくら?

 

それでビオ・サバールの法則ですが、例えば次の図のようなフニャっとした電線に電流 $I$ が流れていて、電線の微小部分を $dl$、$dl$ の方向(電線の接線方向)と $dl$ から点 $\mathrm{P}$ を見たときの方向とのなす角を $\theta$、$dl$ と点 $\mathrm{P}$ との距離を $r$ とすると、微小部分 $dl$ により点 $\mathrm{P}$ に作られる磁界の大きさは、

 

ビオ・サバールの法則の説明図@

 

$dH = \dfrac{I \, dl \sin \theta}{4 \pi r^2}$ [$ \mathrm{A / m} $] …@ (←これがビオ・サバールの法則の式

 

で与えられるという法則です。

 

簡単に言えば、「ビオ・サバールの法則を使うと、電流が流れている電線の周りの磁界を求めることができます。」ってことですね。

 

このビオ・サバールの法則の式を使うと任意の点 $\mathrm{P}$ の磁界の大きさを求めることができるのですが、ここでちょっと注意です!

 

@式をみると、左辺は「$dH$」と書かれていますよね?

 

これは、微小部分 $dl$ だけによる磁界の大きさ という意味で、つまり、電線に流れている電流全体によって作られる磁界の大きさではありません。

 

ビオ・サバールの法則の説明図A

 

なので、電線に流れる電流全体によって作られる点 $\mathrm{P}$ の磁界の大きさを求めるためには、

 

(微小部分 $dl$ が点 $\mathrm{P}$ に作る磁界)+(微小部分 $dl$ が点 $\mathrm{P}$ に作る磁界)+(微小部分 $dl$ が点 $\mathrm{P}$ に作る磁界)+・・・

 

と、足し合わせていく必要があります。つまり、こういうことです。

 

ビオ・サバールの法則の説明図B

 

この足し合わせる計算を一つ一つしていったら大変ですよね? 電線が無限の長さだったら無限に計算が続いてしまいます。計算が終わりません!

 

こんな計算のときには積分が役に立ちますね!

 

@式の両辺を積分してみましょう。@式の両辺を積分すると、

 

$\displaystyle\int dH = \int \dfrac{I \, dl \sin \theta}{4 \pi r^2}$ 、 $\displaystyle\int dH = H = \int \dfrac{I \sin \theta}{4 \pi r^2} \, dl$

 

$\therefore H = \displaystyle\int \dfrac{I \sin \theta}{4 \pi r^2} \, dl$ [$ \mathrm{A / m} $] …A となります。

 

このA式には積分範囲(積分する範囲)が書いていなくて不定積分の形になっていますが、積分範囲は求めたい電線(電流)の形状などを考慮して与えればいいです。

 

これなら無限に計算をする必要がないですね!

 

では次に、このビオ・サバールの法則を使って、無限直線状電流による磁界の大きさ、円形コイル電流による磁界の大きさを求めてみることにしましょう。

 

 


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ビオ・サバールの法則による無限直線状電流の磁界の大きさの求め方

まず初めに、ここでの無限直線状電流について説明します。

 

無限直線状電流とは、無限に長く続く直線に流れる電流という意味で、次の図のようなものです。

 

無限直線状電流の説明図

 

どこまでもず〜っと真直ぐな電線に流れている電流ということですね。説明ってほどでもありませんが、こんな電流です。

 

それで、この無限直線状電流から距離 $a$ 離れた一点を点 $\mathrm{P}$ としたとき、

 

点 $\mathrm{P}$ の磁界の大きさはいくらでしょうか?

 

点Pの磁界の大きさは?

 

電線の微小部分を $dl$、$dl$ の方向(電線の接線方向)と $dl$ から点 $\mathrm{P}$ を見たときの方向とのなす角を $\theta$、$dl$ と点 $\mathrm{P}$ との距離を $r$ として図を書くと次のようになりますね。

 

無限直線状電流と点Pの位置関係

 

ビオ・サバールの式(@式)は、こんな式でした。

 

$dH = \dfrac{I \, dl \sin \theta}{4 \pi r^2}$ …@

 

この@式と上図を見比べてみると、電線に流れる電流は $I$、微小部分は $dl$、$dl$ の方向(電線の接線方向)と $dl$ から点 $\mathrm{P}$ を見たときの方向とのなす角は $\theta$、$dl$ と点 $\mathrm{P}$ との距離は $r \cdots$

 

あ、そのまんま@式を使えますね。なので、微小部分 $dl$ だけによる磁界の大きさ $dH$ は、

 

$dH = \dfrac{I \, dl \sin \theta}{4 \pi r^2}$ …B となります。

 

ここで、先ほど「注意」として書いたように、$dH$ は $dl$ だけによる磁界の大きさでした。

 

今求めたい磁界の大きさは、無限に長い直線状電流によって作られる磁界の大きさなので、B式を足し合わせ(積分)しなければなりませんね。

 

積分範囲は、直線状の電流が無限に長く続いているので、$- \infty$ から $+ \infty$ となります。

 

積分範囲の説明図

 

したがって、B式を $- \infty$ から $+ \infty$ の範囲で積分すればいいです。なのでB式より、

 

$H = \displaystyle\int_{- \infty}^{+ \infty} \dfrac{I \, dl \sin \theta}{4 \pi r^2}$ $= \displaystyle\int_{- \infty}^{+ \infty} \dfrac{I \sin \theta}{4 \pi r^2} \, dl$

 

$4 \pi$ と $I$ は定数なので、積分の外に出しましょう。

 

$H = \dfrac{I}{4 \pi} \displaystyle\int_{- \infty}^{+ \infty} \dfrac{\sin \theta}{r^2} \, dl$ …C

 

C式をみると、あらら困りました…。$l$ で積分する式になっているのですが、積分の中の式は変数 $\theta$ と $r$ になっています。このままでは積分できないので、C式を定数 $a$ と $\theta$ の式に変形します。

 

点 $\mathrm{P}$ から直線状電線に垂直にひいた線分と直線状電線との交点を原点として座標を考えると、次のようになりますね。

 

点Pから直線状電線に垂直にひいた線分と直線状電線との交点を原点として考えたときの座標

 

この図より、$a = r \sin \theta$ …D  $l = - r \cos \theta$ …E が成り立ちます。(E式は上図よりマイナスが付くことに注意しましょう。)

 

D式より、$r = \dfrac{a}{\sin \theta}$ …F

 

F式をE式に代入すると、$l = -\dfrac{a}{\sin \theta} \cdot \cos \theta$  $\therefore l = -\dfrac{a \cos \theta}{\sin \theta}$ …G

 

G式を $\theta$ で微分します。すると、

 

$\dfrac{dl}{d \theta}$ $= - \left( \dfrac{-a \sin \theta \cdot \sin \theta - a \cos \theta \cdot \cos \theta}{\sin^2 \theta} \right)$  (←微分の公式を使っています)

 

$= \dfrac{a \sin^2 \theta + a \cos^2 \theta}{\sin^2 \theta}$ $= \dfrac{a ( \sin^2 \theta + \cos^2 \theta )}{\sin^2 \theta}$ $= \dfrac{a}{\sin^2 \theta}$  $\left( \because \sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1 \right)$

 

$\therefore dl = \dfrac{a}{\sin^2 \theta} \, d \theta$ …H

 

F、H式をC式に代入すると $\theta$ の式になりますが、$l$ の式から $\theta$ の式に変換しているのでC式の積分範囲が変わります。

 

C式は $l$ で積分する式で、積分範囲が $-\infty$ から $+\infty$ ですが、これを $\theta$ で考えた場合の積分範囲は $0$ から $+ \pi$ になります。

 

lの式からθの式に変換するときの積分範囲の説明図

 

したがって、F、HをC式に代入して積分範囲を $\theta$ で考えると、

 

$H = \dfrac{I}{4 \pi} \displaystyle\int_{-\infty}^{+\infty} \dfrac{\sin \theta}{r^2} \, dl$ $= \dfrac{I}{4 \pi} \displaystyle\int_0^\pi \dfrac{1}{\left( \dfrac{a}{\sin \theta} \right)^2} \cdot \sin \theta \cdot \dfrac{a}{\sin^2 \theta} \, d \theta$

 

あとは、これを計算していけば、求めたい無限直線状電流によって作られる磁界の大きさが求められます。

 

$H$ $= \dfrac{I}{4 \pi} \displaystyle\int_0^\pi \dfrac{1}{\dfrac{a^2}{\sin^2 \theta}} \cdot \sin \theta \cdot \dfrac{a}{\sin^2 \theta} \, d \theta$ $= \dfrac{I}{4 \pi} \displaystyle\int_0^\pi \dfrac{\sin^2 \theta}{a^2} \cdot \sin \theta \cdot \dfrac{a}{\sin^2 \theta} \, d \theta$

 

$= \dfrac{I}{4 \pi} \displaystyle\int_0^\pi \dfrac{\sin \theta}{a} \, d \theta$ $= \dfrac{I}{4 \pi a} \displaystyle\int_0^\pi \sin \theta \, d \theta$ $= \dfrac{I}{4 \pi a} \left[ -\cos \theta \right]_0^\pi$ $= \dfrac{I}{4 \pi a} ( -\cos \pi + \cos 0 )$

 

$= \dfrac{I}{4 \pi a} ( 1+1 ) = \dfrac{I}{4 \pi a} \cdot 2 = \dfrac{I}{2 \pi a}$

 

したがって、無限直線状電流による磁界の大きさは、

 

$\therefore H = \dfrac{I}{2 \pi a}$ [$ \mathrm{A / m} $] となります。

 

補足|l⇒θに変換する計算方法について

$l$ ⇒ $\theta$ に変換する計算過程において、参考書によっては $\cot \theta$ や $\mathrm{cosec} \, \theta$ を使って表わしていますが、このページの計算方法のように $\sin \theta$ 、$\cos \theta$ だけでも表わす(計算する)ことができます。
「$\cot \theta$ や $\mathrm{cosec} \, \theta$ は苦手だな〜」という方は、このページの計算方法で計算した方が比較的おぼえやすく簡単かもですよ。

ビオ・サバールの法則による円形コイル電流の磁界の大きさの求め方

次は、円形コイルに流れる電流(ループ電流)により作られる磁界の大きさをビオ・サバールの法則により求めてみます。

 

円形コイルは次のような円形の電線で、この円形コイルを電流がぐるぐる流れています。

 

円形コイルと流れる電流

 

この円形コイルの中心の磁界の大きさはいくらでしょうか?

 

円形コイルの中心を点 $\mathrm{O}$、円形コイルの微小部分を $dl$、円形コイルの中心軸上の任意の点を点 $P$、線分 $\mathrm{OP}$ の方向と $dl$ から点 $\mathrm{P}$ を見たときの方向とのなす角を $\phi$、$dl$ と点 $\mathrm{P}$ との距離を $r$ として図を書くと次のようになりますね。

 

円形コイルと点Pの位置関係

 

求める磁界の大きさは点 $\mathrm{O}$ の磁界の大きさですが、まず点 $\mathrm{P}$ の磁界の大きさを求めて、そのあとに条件を代入して点 $\mathrm{O}$ の磁界の大きさを求めます。

 

では、点 $\mathrm{P}$ の磁界の大きさを求めてみましょう。ビオ・サバールの法則の式(@式)は、こんな式でした。

 

$dH = \dfrac{I \, dl \sin \theta}{4 \pi r^2}$ …@

 

この@式と上図を見比べてみると、円形コイルに流れる電流は $I$、微小部分は $dl$、$dl$ と点 $\mathrm{P}$ との距離は $r$ ですね。

 

ここで一つ気を付けなければならないのは、@式の角度 $\theta$ は上図の角度 $\phi$ ではなく、$dl$ の方向(電線の接線方向)と $dl$ から点 $\mathrm{P}$ を見たときの方向とのなす角です。

 

なので、この場合には $\theta = 90^{\circ}$ となり、@式の $\sin \theta$ は $\sin \theta = 1$ になります。

 

sinθ=1の説明図

 

したがって、微小部分 $dl$ による磁界の大きさ $dH$ は、

 

$dH = \dfrac{I \, dl \sin \theta}{4 \pi r^2} = \dfrac{I \, dl}{4 \pi r^2}$  $\therefore dH = \dfrac{I \, dl}{4 \pi r^2}$ …I となります。

 

ここで、点 $\mathrm{P}$ に作られる磁界について考えてみましょう。上図を横から見ると次のようになります。(横から見たときの点 $P$ の横方向を $x$ 方向、縦方向を $y$ 方向としています。)

 

点Pに作られる磁界のベクトル図

 

この図より $dH$ の $x$ 成分 $dH_x$ は、微小部分 $dl$ がぐるっと一周すると全て打ち消しあってゼロになります。

 

点Pを真上から見た図

 

なので、この場合には $y$ 方向成分だけ考えればいいことになります。$y$ 方向成分 $dH_y$ は図より、

 

$dH_y = dH \sin \phi$ …J となります。

 

このJ式にIを代入すると、$dH_y = \dfrac{I \, dl}{4 \pi r^2} \sin \phi$ となり、これを円形コイルのぐるっと一周分足し合わせたものを求めればいいです。この場合は円形コイルなので、円の円周分($2 \pi a$)足し合わせればいいですね。

 

微小部分dlを一周分足し合わせる

 

なので、積分範囲を $0$ から $2 \pi a$ とすると円形コイル電流による磁界の大きさの式は次のようになります。

 

$H_y = H = \displaystyle\int_0^{2 \pi a} \dfrac{I \, dl}{4 \pi r^2} \sin \phi$  $\therefore H = \displaystyle\int_0^{2 \pi a} \dfrac{I \sin \phi}{4 \pi r^2} \, dl$ …K
($x$ 成分 $H_x$ は考えなくていいので、$y$ 成分 $H_y$ が求める $H$ になります。)

 

あとはK式を計算するだけですが、ここで、次の図のように円形コイルの中心 $\mathrm{O}$ を原点とする座標を考えます。

 

円形コイルの中心Oを原点とする座標

 

すると、$r = \sqrt{a^2 + y^2}$ 、 $\sin \phi = \dfrac{a}{r} = \dfrac{a}{\sqrt{a^2 + y^2}}$ が成り立つので、これらをK式に代入します。

 

$H = \displaystyle\int_0^{2 \pi a} \dfrac{I \sin \phi}{4 \pi r^2} \, dl$ $= \displaystyle\int_0^{2 \pi a} \dfrac{I}{4 \pi \left( \sqrt{a^2 + y^2 } \right)^2} \cdot \dfrac{a}{\sqrt{a^2 + y^2}} \, dl$

 

$= \displaystyle\int_0^{2 \pi a} \dfrac{aI}{4 \pi \left( a^2 + y^2 \right)^{\frac{3}{2}}} \, dl$ $= \dfrac{aI}{4 \pi \left( a^2 + y^2 \right)^{\frac{3}{2}}} \displaystyle\int_0^{2 \pi a} dl$ $= \dfrac{aI}{4 \pi \left( a^2 + y^2 \right)^{\frac{3}{2}}} \left[ l \right]_0^{2 \pi a}$

 

$= \dfrac{aI}{4 \pi \left( a^2 + y^2 \right)^{\frac{3}{2}}} ( 2 \pi a - 0 )$ $= \dfrac{aI}{4 \pi \left( a^2 + y^2 \right)^{\frac{3}{2}}} \cdot 2 \pi a$ $= \dfrac{a^2 I}{2 \left( a^2 + y^2 \right)^{\frac{3}{2}}}$

 

$\therefore H = \dfrac{a^2 I}{2 \left( a^2 + y^2 \right)^{\frac{3}{2}}}$ …L (←これが円形コイルの中心軸上(点 $\mathrm{P}$)の磁界の大きさの式)

 

したがって、求める円形コイルの中心の磁界の大きさは、L式に $y=0$ を代入して、

 

$H = \dfrac{a^2 I}{2 \left( a^2 + 0^2 \right)^{\frac{3}{2}}} = \dfrac{a^2 I}{2 a^3} = \dfrac{I}{2a}$

 

$\therefore H = \dfrac{I}{2a}$ [$ \mathrm{A / m} $] となります。

ビオ・サバールの法則のまとめ

ビオ・サバールの法則についてまとめると次のようになります。

ビオ・サバールの法則のまとめ

  • ビオ・サバールの法則を使うと、電線に流れる電流によって作られる磁界の大きさを求めることができる。
    ビオ・サバールの法則の式: $dH = \dfrac{I \, dl \sin \theta}{4 \pi r^2}$
    無限直線状電流により作られる磁界の大きさ: $H = \dfrac{I}{2 \pi a}$
    円形コイル電流により作られるコイル中心の磁界の大きさ: $H = \dfrac{I}{2a}$

補足|磁界の向きについて

このページでは磁界の向き(方向)については解説しませんでしたが、磁界の向きは右ねじの法則に従った向きになります。右ねじの法則についてはこちらの右ねじの法則のページにまとめていますので参考にしてみてください。

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